石井さんの普段のお仕事について教えて下さい。
現在は、株式会社ミクシィでスポーツ事業部に所属しながら、Jリーグ「FC東京」で、クラブをグローバル面で成⻑させるビジネスリーダーとして関わっているのと、もう一つはBリーグ「千葉ジェッツ」でも同じように関わっています。新しいスポーツビジネスの在り方を今よりも大きく捉えて、新しい日本経済、新しい市場を色々な方と一緒に創っていきたいという想いでやっています。
最近うれしかったことはありますか?
コロナ禍という状況になってから、Jリーグはしばらく無観客試合を行っていたのですが、この間久々に観客を入れて試合ができたことですね。もちろん密を避けるために最大5000人という条件付きでの開催です。無観客試合ですと、パソコンなどの画面を通して応援してくれているファンがいることもわかってはいるんですが、やはりスタジアムでファンの方々の熱気を直接感じられると、クラブや選手はもちろん我々もすごく嬉しくなりますね。
現在コロナ禍ですが、今のスポーツ業界の状況を教えて下さい。
プロ野球とJリーグは専門家のアドバイスや国・自治体の指導を受けながら、規制を緩和していこうという方向ですね。スタジアムのキャパシティに合わせて、徐々に観客を増やしていければ良いなと思っています。Jリーグは全選手がPCR検査を受けているのですが、現在だと新しい唾液タイプのPCR検査を実行しており、今後日本で行われる検査の試金石としても役立つようになっています。スタジアムに来てくれるファンの方々も、三密を避けるなどのマナーに対してすごく協力していただいています。好きな場所だからこそ、自分たちが率先して守っていこうという意識を感じられますね。
FC東京では、グローバル推進本部⻑をされていますが、具体的にはどんなことをされているのですか?
海外のチームとの提携などを手掛けました。ベトナムにあるサイゴンFCというクラブなんですが、日本のクラブとの提携を決めた理由は、日本のクラブのユース選手の礼儀正しさや地域活動など、日本の地道なクラブスタイルを評価されたということでした。海外のチームとの提携で具体的に何をするのかというと指導者の派遣、ノウハウの提供、有力選手の引き取りなどですね。欧米のクラブは、アジアと比較すると元々フィジカルが強く、それを基にした指導を行っています。ですのでアジア諸国のクラブは、欧米に比べてフィジカルが劣っていてもワールドカップで勝てる日本式のサッカーを学びたいように感じますね。また、サッカースクールの立ち上げなど、ビジネス面でもサポートしています。
「人生100年時代」のスポーツビジネスは、今後どうなっていくんでしょうか?
サッカーでは既に、シニアのボランティアの方々に多く協力していただいていています。みなさん本当に楽しそうに協力してくれるんですよ。やはり人間、他人の役に立つという行為は、その人の生きがいになったり、その人を生き生きと輝かせるのかなと思います。例えば、毎日美味しいものを食べられたり、毎日面白い映画を見る生活ができていたとしても、誰の役にも立っていない人生って、心の奥底ではあまり充実感を感じられないのかなと思いますね。自分が他人の役に立っている実感とか直接「ありがとう」と言われる人生を続けられる社会であることが大事だと私は感じています。そういった面でスポーツクラブは、シニアの方々の力になれる可能性をまだまだ秘めていると思います。スポーツや地域イベント、またコロナが落ち着いたらインバウンドなど、そういったエンタメやサービスでは、シニアの方々に活躍してもらう機会があると思いますね。
スポーツ業界の視点から、ワクスタの会員とどのような協働ができると思いますか?
ビジネスの世界的な潮流を見ると、企業のソーシャルバリューというものがますます重要になってきています。売上や利益だけで価値を計るのではなく、その企業が社会的にどういう価値があるかということを見える化していくことが求められています。ソーシャルに貢献していない企業は、投資家が投資をしないため、株価にも影響するという流れが起こっています。ただもちろん企業なので、売上や利益も追求しなくてはなりません。そこでスポーツというものはソーシャルに影響するものなので、ビジネスモデルにスポーツを活かしてほしいなと思います。我々はそういった企業のソーシャルバリューやレスポンシビリティを高めるという点で貢献していかなければならないと考えています。こうした次の経営、次のイシューなどについて、ワクスタ会員の方と一緒に考えていきたいですね。テーマエキスパートには、様々な見識を持っている方が集まっているので、ワクスタやテーマエキスパートを利用して、自分たちがまだ開いたことのない世界を開くことにチャレンジしてもらえればと思います。
プロフィール
石井 宏司
スポーツビジネス全般、新規事業開発
ビジネス連携ディレクター