岩崎さんの仕事について教えてください。
主に飲食店向けに野菜・果物の販売をしている「ベジクル株式会社」の取締役を務めております。その中で、既存事業の業績を伸ばしながら、主に新規事業開発をメインに担うのが私の役割です。特に現在はコロナ禍で、これまでのビジネスモデルだけでは通用しないので、個人向けの宅配サービスをはじめたり、生鮮食品の流通プラットフォームの構築などに取り組んでいます。
岩崎さんがこの仕事に就こうと思ったきっかけを教えてください。
私はみかんの専業農家に長男として生まれまして、農業がすごく身近な環境で育ちました。大学卒業後は、いくつかの企業を経て、2015年に「株式会社イージェイ」という会社をつくって、コールドプレスジュースやスープなど健康な食を製造・販売する事業を立ち上げました。その後は農業系の会社の取締役を務めたりと、かなり紆余曲折しながら、食産業の工程の全ての領域を経験しました。現在所属するベジクルは、食産業における卸・流通を担う会社です。流通というのはよく不要論が唱えられてしまう仕事です。生産者から直接、商品を買えばそれだけムダなコストが省けるという論調なのですが、それでも私は流通が存在する意義があると考えています。ベジクルは卸の中でもいち早くデジタルマーケティングを採り入れたり、生産性の向上に投資をしてきた会社なので、この会社を成長させれば、業界を変革できると感じたのが入社したきっかけですね。
コロナ禍で新しく始めたサービスについて教えてください。
コロナ禍で飲食店や加工工場向けの野菜の流通は大打撃を受けました。その余波で生産者も厳しい状況に立たされており、現状維持ではダメだと感じています。ピンチは変革・挑戦のチャンスと捉え、新しい取り組みとして始めたのが、家庭向けの野菜宅配サービス「NEWSマルシェ」。新聞販売店と提携して、市場の新鮮な野菜をご家庭にお届けするというものです。新聞販売店って、朝刊と夕刊以外の時間帯は稼働がないんですよ。その空いた時間の人員と車両を野菜の宅配に当ててもらうというビジネスモデルとなっています。販売店さんも大きな課題意識を持たれていたので、実現までは比較的スムーズに進みました。
これからの農業を取り巻く未来はどうなっていくでしょうか?
農業は担い手不足や農地の減少など、様々な問題が山積みです。ここを事業者や消費者が、どう支えていけるかが未来につながっていくと思います。だから作る人、食べる人、製造や調理をする人、届ける人、そういう食を取り巻く人たち皆が持続可能な、ハッピーになるビジネスをやっていこうと思っています。誰かが損をするビジネスモデルをつくったとしても、それは結局、持続していきませんから。個人としては日本の食産業や農業・漁業は、これからの日本を代表する成長産業になり得ると考えています。ですからワクスタの会員さんの中でも、これからの成長産業として食や農業に興味のある方がいたら、一緒に協働していきたいと思っています。
プロフィール
岩崎 亘
農業・食ビジネス全般
ベジクル株式会社 取締役