今を受け入れ、楽しむ。最小単位の働き方改革| WORK STYLERのとある1日

仕事で困難な状況に直面したり、毎日変わり映えがしなくてつまらないと感じたりすることは、誰しも一度はあるでしょう。転職が当たり前の時代、働き方を変えるために職場を変えるという選択肢もあります。でも、その前に。今の与えられた環境で、自らの手でできることも、あるかもしれません。

今回登場するWORK STYLERは新日鉄住金ソリューションズの後藤龍伯さん。朗らかな雰囲気で場を明るくする後藤さんのある1日の様子を伺うと、個人が企業の中で働きがいを感じるためのヒントが隠れていました。

Profile

新日鉄住金ソリューションズ株式会社
ソリューション企画・コンサルティングセンター

後藤龍伯

エンジニアを志望し、新卒で新日鉄住金ソリューションズ株式会社に入社。大分支社で大学向けのシステム開発を4年、営業を4年担当したのち、東京本社へ。現在はさまざまな企業のITコンサルティングを行うかたわら、新規事業開発も手がける。多忙な仕事の合間に、趣味の演劇活動も行う。

まっすぐな階段ではなく、らせん階段のようなキャリアを築く

通勤電車の中でFacebookを眺めていると、気になる投稿が流れてきた。少し前にクラウドファンディングで出資した商品の広告だった。

面白そうなアイテムがもらえるクラウドファンディングのプロジェクトを見つけては出資をすることが趣味の1つ。今身に付けているBluetoothイヤホンも、最近クラウドファンディングで手に入れたものだ。

今日は仕事帰りに演劇の稽古に行く日。数ヶ月前に舞台を観に行ったときに興味を持ち、会社員とは別の世界を覗いてみたくて、その劇団への所属を決めた。今は公演が近いのでセリフを覚えなければいけない。バッグから演劇の台本を取り出し、会社の最寄り駅に着くまでセリフを目で追いかけた。

今の部署でITコンサルティングを担当するようになって4年目。新卒で入社してからこれまでエンジニア4年、営業4年と経験し、何か新しいことをしたいと思って会社に相談したところ、コンサルティングの部署があるからと勧められて異動した。

趣味でも仕事でも、すぐに新しいことに挑戦したくなってしまう性分の自分にとって、毎回新しいクライアントに関わり、短期集中でプロジェクトを仕上げる今の仕事はとても向いていた。

一般的には1つの会社でエンジニア、営業、コンサルタントというキャリアを築くことは難しいかもしれない。会社を変えることなく、その時々に自分がやりたい仕事に挑戦する環境を与えてもらっているのはありがたい。今まで積み上げてきたものを活かしながら、今までとは少し違うことをやっていく。らせん階段をのぼっていくようにキャリアを形成していくのが理想だ。

今の時期は業務が比較的落ちついているため、新しい企画を考えることに時間を使うことができるし、早めに退社して趣味を楽しむ余裕もある。この時期にあちこちにアンテナを張っておくことがきっと仕事のパフォーマンスにもいい影響を与えるはずだ。

電車が駅に到着したので、台本をバッグにしまった。

いつだって、目の前の状況を最大限に楽しむ

オフィスに着いてからざっとメールをチェックし、すぐに現在担当しているプロジェクトの企画書作成に入った。クライアントのシステムが抱える現状の課題を整理して、将来的にどうしていくのか。そのためにどんな施策が必要なのか——。クライアントにヒアリングした内容を参考にしながら、企画書の作成を進めていく。

デスクで作業していると、後ろを通りがかった同僚が声をかけてきた。

「後藤さんのデスクの上にあるやつ、新しいハンドスピナーですか?」

「そうだよ」

「後藤さんのデスクっていろいろ置いてありますよね。ハンドスピナー、マッサージ棒、知恵の輪……」

デスクには自分が好きなアイテムを飾っている。まあ、ほかの人から見たらごちゃついてるように見えるかもしれないけれど……。

とはいえ、気になるアイテムを見つけるとみんなが声をかけてくれて、自然と会話が生まれる。僕が仕事でいつも重視していることは、「今ある状況をどうやって最大限に楽しむか」ということ。一緒に働く同僚やクライアントとスムーズに仕事を進めるためにも、会話のきっかけをたくさん作りたい。だから、洋服や持ち物にしても、「これ何?」とみんなに興味を持ってもらえるアイテムをなるべく選んでいる。

今やっている仕事が大変だからといって、いきなり仕事を投げ出すことはできない。だったら、「少しでも現状を楽しむためにどうしたらいいか」を考えたいと思う。長期的には大変な状況になっている原因を解決するための取り組みも必要だ。でも、組織を動かすためには時間がかかるし、たくさんの人の力もいる。それに比べれば、今目の前にある仕事を楽しむ方法を考えることは自分1人でもできる。

せっかく同じ仕事をするなら、少しでも楽しいほうがいい。

大切なのは「何の仕事をするか」より、「誰と一緒に働くか」

お昼休みの時間になり、同僚5人で中華料理店へと向かった。仕事の相談をしたり、週末の予定を話したり。先輩も後輩も混ざってみんなで会話を楽しむうちに、50分のランチ休憩があっという間に過ぎてしまった。

以前、採用活動の手伝いをしたとき、学生に「仕事をするうえで大事なのは、何をするかよりも誰と一緒に働くか」と伝えたことがある。

もちろん自分がやりたい仕事をできるのは楽しいけれど、やりたくない仕事や大変な仕事をしなければいけないときもある。そんなとき、一緒に働く人がいい人だったら、ときには愚痴を言い合ったり、励まし合ったりしながら乗り越えられる。だから、少なくとも僕自身は、一緒に働くみんなが楽しんで仕事ができるように意識していきたい。

賑やかなランチを過ごしながら、改めてそんなことを感じた。

「まだやったことがない面白いこと」を探し続ける

ランチを終え、午後はクライアント企業に訪問。はじめて訪問した企業だったが、打ち合わせはスムーズに進んだ。これからいろいろと提案していくにあたって準備をしなければいけない。

2時間ほどで打ち合わせは終了し、会社に戻ると移動時間がもったいないので、近くのワークスタイリングへと向かった。ワークスタイリングに来ると、会社にいるときとは違った気分で仕事ができる。週に1回程度、午後の打ち合わせのあとなどに利用することが多い。

定時になるまでの残り時間、クライアントワークとは別に進めている新規事業の企画を錬ることにした。新卒で入社してから8年間、大学のシステム開発に携わっていたこともあり、現在はその強みを活かして新しい事業を模索している。

もう少し先になるだろうけれど、これまでの経験を複合的に活かしながら、まだやったことのないことがない面白そうなことを見つけて挑戦していきたい。今の会社は幅広い業界、業種の仕事がある。きっとまだまだ面白い仕事があるはずだ。

会社以外の人との接点が人生を充実させる


定時になったので、ワークスタイリングを後にした。最近は一気に日が落ちるのが早くなり、外はすっかり暗くなっている。

その足で劇団の稽古場に向かった。稽古場までは決して近くはないが、電車に揺られている時間がオンオフの切り替えにちょうどいい。今は公演前なので、週2〜3日通っている。

所属している劇団は社会人が多く、プロを目指している人もいるが、趣味として演劇を楽しんでいる人がほとんど。劇団にはさまざまな年齢、職業の人いるので、いろいろな人の考え方に触れられるのが自分にとっていい刺激になっている。会社以外のコミュニティに入って世の中との接点をたくさん持つことは、人生を充実させるために大切なことだ。

みっちり3時間稽古して、着替えながら周りの人と雑談をかわす。気がつけばもうすぐ終電の時間。ここから家までは1時間近くかかる。ついこの前、妻から「たまには早く帰ってきてよ」と言われたことを思い出した。でも、一度ハマったら楽しみ尽くしたい性分なので仕方がない。趣味だって全力で楽しみたい。

与えられた環境がいつも自分の思い通りになるとは限らない。でも、どうせ同じことをするのなら、少しでも楽しんだほうが得だし、得られるものも大きいはずだ。

それに、会社の中にも僕が知らない面白い取り組みがまだまだあるだろうし、会社の外にも知らない世界がたくさん広がっている。これからも、それを1つひとつ追いかけていきたいと思う。

今ある状況を変えるのは、いつだって自分次第なのだ。

明日も朝から仕事。心地良い疲労感を感じながら、家路を急いだ。

Text:Kayo Murakami
Photo : Yuko Nara(numphoto.Inc)