営業畑で19年。“人と会うこと”が生み出すもの | WORK STYLERのとある1日

異なる企業で働く人同士がふとしたきっかけで出会い、新しいコラボレーションにつながった——。最近、そんな話をあちこちで耳にする機会が増えてきました。予想外の出会いは、自分がいるフィールドを飛び出して行動していくことで得られるもの。今回のWORK STYLER・富士ゼロックス株式会社の飯島祐輔さんもまた、つながりを広げながら新たな価値創造に取り組んでいる1人です。「人と話すのがとにかく好き」と語り、天性の営業マンとも言える飯島さんが仕事で大事にしていることとは——。

Profile

富士ゼロックス株式会社
中央営業事部 ビジネストランスフォーメション営業二部 金融BTPグループ

飯島祐輔さん

大学卒業後、富士ゼロックス株式会社に入社。以来、営業一筋で19年勤務し、主にシステム営業、ソリューション営業として活躍。2003年より金融機関を担当。公私共に幅広いネットワークを持っていることとフットワークが軽いことが強み。

人間味のある営業は機械にはできない

ひと昔前まで、営業という仕事は情報格差で儲けていたと思う。お客さんが知らない情報を提供し、それと絡めて自社商品をすすめればモノが売れた。でも、インターネットで何でも調べられる今の時代、お客さんのほうが情報を持っていることもしばしば。しかも、どこもモノが充足しているわけで、かつてのような営業方法ではモノが売れなくなってきた。

もしかしたら近い将来、AIが営業業務をすべてやってくれるかもしれないし、ベーシックインカムが導入されて働くこと自体が格好悪いことになるかもしれない。そうなったら、営業という仕事はなくなるのだろうか?

朝イチでお客さんの会社に向かう道すがら、ぐるぐるとそんなこと考えていた。いやいや、自分がやっているような人間くさい営業を機械ができるわけない。

営業の仕事がしたいと思い、複合機をメインで扱う会社に勤めて19年。現在は銀行、証券会社、保険会社、カード会社などの大手金融機関を横断して担当している。売っているのは複合機ではなく、業務を改善するためのソリューション。お客さんが業務で困っていることを聞いて、一緒に解決方法を考えていくことが自分の仕事だ。これは機械にはできないはず。

例えば、先日は働き方を見直したいというお客さんに対して、働き方の1つの例として、自分が頻繁に利用しているワークスタイリングを案内した。最近は1日に何件かアポが入っているときは外出先の近くのワークスタイリングを利用し、自社オフィスへ戻る移動時間を減らしている。こうした自分たちの働き方をお客さんに紹介することで、何か課題解決のヒントを見つけてもらえるかもしれない。

先日お客さんから「ペーパーレス化したい」という相談を受けたときは、最終的に商品を売らなかった。「なぜペーパーレス化をするのか」という目的を掘り下げていったところ、いつもなら自社商品に落とし込んでいくが、このケースでは必要ないと考え、「紙のままのほうががいいのでは?」という結論をお伝えした。お客さんとの長い付き合いの中では、こういったすぐに直接的な売上につながらないケースがあってもいいと思っている。

今風に言うと、自分の仕事は一種のコンサル業務に近いかもしれない。けれど、コンサルというとなんだかドライすぎるような気がする。実際はけっこう泥臭いこともやっているし、ビジネスライクな付き合いではなくて人間味あふれることをやっていきたい。 困っているときに相談に乗ってくれる営業さんという存在でいたいと思う。関係性を築ければ、別の機会に大きなヒットにつながる相談をされることもある。

いろいろな人に会って、旬な情報を仕入れる


営業は情報格差で儲ける——これは今も基本的には変わっていないと思う。ただその情報が何かは変化している。営業として自分ができることは、お客さんがほしがりそうな旬な情報を常に仕入れるために最善を尽くすことだ。

当然、お客さんも業界の最新動向はニュースなどでチェックしている。その中で自分が伝えられる価値ある情報は何かというと、いろいろな業界、企業の動向に関する情報だ。ほかにも、世の中で何が今トレンドになっているのか、おもしろい取り組みをしている人はどんなことを考えているのか、誰に話を聞くのが課題解決への一番の近道なのかなどを知っていることが、営業としての自分の武器になると思う。

旬の情報を仕入れるためには会社の外へ出ていくことが必要だ。仕事だからというよりは、単純に自分が好きだからなのだが、自分はやっぱりいろいろな人と会って話をしたい。学生時代の仲間や昔の同僚が今どんなことをしているのかを知りたいし、自分とは違う業界で働いている人との人脈もどんどん広げていきたい。新しいつながりを作る活動、すでにあるつながりを深める活動は自分の仕事の土台に欠かせないものだ。

この日の午前中のお客さんとの打ち合わせでは、「飯島さんの提案のおかげで、業務がだいぶラクになったよ。本当にありがとう」という言葉をいただいた。営業として19年やってきているが、いまだにお客さんからの「ありがとう」という言葉は目標売上を達成するよりもうれしい。この言葉だけで、3年分のエネルギーをもらったような気分だ。

メーカーの営業は最終的に売るモノは決まっている。でも、「このサービスを使ってお客さんの何を改善するのか」はアイデア次第で広がっていく。それを提案できるのは、お客さんのことを一番分かっている営業だけ。自分はそこで勝負をしていきたいと思っている。

効率化とコミュニケーション促進を両輪で進める


取引先での打ち合わせ終了後、いつものように一番近いワークスタイリングへと向かった。ワークスタイリングに行くといろいろな業種、企業の方に会えて刺激をもらうことができるので、機会があれば足を運ぶようにしている。

先日も、近くに座っていた方に話しかけたら通信業界で働く方で、偶然にもご近所だということが判明して仲良くなった。そこから、お互いがどんな仕事をしているのかを話すようになり、今度何か一緒にコラボレーションしたいですねという話をこっそりと進めている。

ワークスタイリングでは取引先の1つとスカイプで打ち合わせをしたあと、1時間ほど集中して作業をした。

ワークスタイリングを利用するようになり、隙間時間を活用することで仕事の効率が格段に上がったと思う。自分の場合はワークスタイリングの活用に加えて在宅勤務制度を活用しているので、かなり自由に働くことができている。在宅ワークの日は小学校に行く娘を見送ることもできる。働き方改革というと残業を減らすことに注目されがちだが、大事なことは1人ひとりが自分に合った自由な働き方ができることだと思う。働き方の選択肢が増えれば、人生も豊かになっていくはずだ。

夕方に本社で会議があるのでそろそろ戻らないといけない。席を立つ前に、社内SNSで本社にいる同僚にメッセージを送信した。

「今、護国寺の近くにいるんだけど、いつもの人気の和菓子屋さんの豆大福、いる?」
「食べたいです! 買ってきてください」

すぐに返信がきた。このあたりに来るといつもこの豆大福をおみやげに買っていく。社内のみんなに大好評なのだ。

最近、自分がいる部署では直行直帰が推進されているため、以前よりも部のメンバーが一同に集まる時間が減った。でも、普段から社内SNSを使って業務連絡はもちろんのこと雑談をしているので、コミュニケーションの総量はあまり減っていないような気がする。

豆大福を数個買って、本社へと戻った。戻ってすぐに上司と業績すりあわせの会議が始まり、終わったのは17時を過ぎた頃。会議からの流れでそのまま上司と飲みに行くことになった。今の働き方をしていると、上司との接点も少なくなる。直接会うことが減る分、機会を見つけては飲みに行くようにしている。

今の部署ではもともと定時になると「そろそろ1杯行くか」と誰かが言いだして部のメンバーで飲みに行くことが多かったのだが、今はメンバーみんながバラバラな場所で働いているのでなかなか全員そろわない。社内SNSで部のメンバーに「今日は大手町で飲んでるから、来られる人は来てよ」とメッセージを送ったところ、「これから向かいます!」という返信がいくつか届いた。いつもこんな感じでSNSで飲み会の連絡がまわって、ちりぢりになっているメンバーが集まってくる。

こういう雰囲気は大事にしていきたい。よく、自由な働き方を推進するとメンバーのコミュニケーションが希薄になるという話を聞くことがある。しかし、効率化を進めることと、コミュニケーションを促進することは両方一緒に取り組まないといけないことだと思う。コミュニケーション促進のためには、ときには無駄と思えるような会話だって大事なのだ。

会社の外でつながりを広げていくことも、会社の中のつながりを深めていくことも、どちらが欠けても自分の仕事は成り立たなくなるような気がする。何が自分にとっての新しい刺激になるのかわからないし、得た情報がどうやってお客さんにつながっていくかもわからない。だから、目の前におもしろそうなチャンスが来たときにすぐに反応できるように、あちこちに顔を出して種を蒔いておきたいと思う。

上司とともに会社近くの居酒屋へ行き、とりあえず2人でビールを注文。キンキンに冷えたビールで勢いよく乾杯をした。

Text : Kayo Murakami
Photo : Yuko Nara(numphoto.Inc)