仕事と子育ての“悩み”とさよならする、タスク化の魔法 | WORK STYLERのとある1日

出産を機に育児とキャリアとの両立に悩む女性は多いもの。迷い、考えた末に辿り着く答えは人それぞれです。今回登場するWORK STYLER・丸山明子さんの場合は、出産を機にキャリアのアクセルをさらに踏み込んだパターン。

「子どもとの時間を削って仕事をするからには、それだけ価値のある仕事をしたい」と話す丸山さん。育児と仕事、さらには社外活動もこなすという多忙な毎日。それを支える鍵は「タスク化」と「ルーティン化」にありました。そんな丸山さんの働く1日をご紹介します。

Profile

株式会社味の素
グローバルコーポレート本部 コーポレート戦略部 マネジャー

丸山明子さん

大学院卒業後、味の素株式会社に研究職で入社。約10年、酵素の応用開発と技術営業に携わる。出産を機に自分のキャリアを改めて考え、「MBAを取得したい」と上司に相談したところ、「現場で学べ」とコーポレート戦略部に異動することに。夫は現在シンガポールに単身赴任中で、6歳と2歳の娘の子育てを1人でこなす日々を送る。

ルーティン化して慌ただしい毎日を乗り越える

我が家の朝は“いつものルーティン”で始まる。

朝起きて顔を洗ってから、2人の娘を起こしにいく。声をかけただけで起きないのは毎朝のこと。そして、シンガポールに単身赴任中の夫が毎朝していたように、夢うつつの娘たちをお姫様抱っこしてリビングへ連れていく。それから、娘たちと一緒に朝食を食べて、歯磨きをして、着替えをして、姿勢がよくなる体操。長女はピアノの練習も。ひと通り終わったらテレビを見て、その間に私は出かける準備をする。

いつもと同じことを、いつもと同じ順番でこなしていくのが我が家の朝のスタイル。小さい頃からルーティン化して習慣づけたせいか、娘たちも朝の準備を進んでやってくれるため、時間がない朝は本当に助かる。たまに用事があっていつもと違う日があると、「ママ、順番が違うよ」なんて言われるくらい。

育児でも仕事でも、大なり小なり困ったことは発生するけれど、「ポジティブな思考のほうが生産効率がいい」と、なにかの本か論文で読んで以来、“悩む”ことはやめた。目の前にあるものは“悩み”ではなく、すべて課題であり、“タスク化”できること。タスクを整理して、1つずつ“ルーティン化”していくことが、私の日常になった。

一連の朝のルーティンを終えて、3人で保育園へと向かう。歩きながら娘たちの表情を見ると、今日もニコニコ笑っているので安心した。保育園に到着して娘たちが元気良く教室に入っていくのを見送ったら、すぐに仕事モードに頭を切り替える。電車の中でメールをチェックして、今日やるべきタスクを頭の中で整理した。

子どもと過ごす時間と相応の価値ある仕事がしたい

オフィスに着いて最初にするのは、1杯50円のコーヒーを飲むこと。朝にコーヒーを飲まないと脳が目覚めない気がするので、これも長いこと私の“ルーティン”の1つになっている。移動中に確認したメールの返信は午後に回して、午前中はいつものように深く考える仕事を中心に進めていく。

今いる部署では、アライアンスのノウハウを活用して新規事業を開発する仕組みを作ったり、スタートアップ企業と事業部のコラボをサポートしたりするのが私の主な仕事だ。

入社してから10年ほどは研究畑で働いていたが、出産をきっかけに今の部署に異動をした。仕事はずっと続けていきたいと思っていたけれど、娘との大切な時間を削って仕事をするからには、自分にとって仕事に相応の価値がないとつりあわないと思うようになった。仕事をすることで娘に対して罪悪感を感じたくない。だからこそ、「今の仕事が楽しい」と娘に自信を持って言えるような仕事をしたい。そう思って上司に異動願いを出した。

今では、異動して本当に良かったと思う。今の部署で働きはじめてから、いつのまにか子どもと過ごす時間と仕事のバリューを比較することはなくなっていた。

育児をしている女性だと突発的な事案に対応することが難しく、仕事の幅が限られてしまうことも多い。その点、私の場合は実家のサポートや在宅勤務を推奨する会社のおかげもあり、子育てをしながら、さまざまな新規事業が生まれる刺激的な現場に立つことができている。

また、今の働き方を実現できているのには、上司の存在も大きい。上司は、私が新しいことにチャレンジしようとするとき、今の私になにが足りていなくて、どうしたら乗り越えられるかを的確に教えてくれる。そんな上司から「限られた時間で成果を出せるように仕事のやり方を変えなさい」と言われ、私は仕事の進め方を変えた。

どんなにがんばって作業したところで、本質とは関係のないことをしていたら意味がない。その打ち合わせは本当に外せない? その資料は本当に必要? 限られた時間を、本当に価値を生み出せる仕事に使うように意識した。そして、その効果は目に見えてあらわれた。

もうすぐお昼。12時からはランチを兼ねて、社外の人とランチミーティングがある。パソコンを閉じて外出の準備をはじめた。

仕事はルーティン化できないものほど、効率化しやすい

今日のランチは「チーム・ゼロイチ」で出会った仲間と。「チーム・ゼロイチ」はさまざまな企業の人材が集まり、事業創造を学習・体験できるプログラム。今の部署でスタートアップ企業と関わるようになり、自分でも新規事業の開発をしてみたいと思うようになった。そこで最近は「チーム・ゼロイチ」でチームを組み、「プチビジョン」という子育てに短期的なビジョンを夫婦に持ってもらう新規事業を検討する活動をしている。会社の業務外の活動なので、ミーティングはランチを兼ねて行ったり、仕事が早く終わったときに集まったりすることが多い。

仕事に子育て、そしてさらに社外活動と、欲張りすぎているように感じられるかもしれない。でも、これも私にとっては価値を生み出す大切な時間。実際に自分が子育てをしている立場で、そこで感じたことを社会に還元できる事業に落とし込んでいく作業は、とても有意義だ。

ミーティング終了後は移動の時間を短縮するために、品川のWORK STYLINGへ。午後の仕事はその日によってさまざまだけど、午前中に後回しにしたタスクを消化することが多い。WORK STYLINGのようなサテライトオフィスを利用したり、もし打ち合わせが必要であればビデオチャットを活用したりと、なるべく効率的に業務を進める工夫はしている。

プライベートは徹底的に「ルーティン化」をしている私だけど、実は私の部署の仕事はルーティン化するのがとても難しい業務だ。だけど、だからこそ今より効率化する余地がたくさん残されている。

一般的に、子育てをしながら働く場合、会社から時間の管理がしやすいような「型にはまった」仕事を任される場合も多い。だけど一方で、そういった仕事は、すでに無駄がなく、さらに効率化するのが難しかったりもするから。

溜まっていたメールの返信をしたり、スカイプで取引先とミーティングしていると、終業時刻の16時半になった。

朝決めた今日の仕事のタスクは、ほぼクリア。いったん仕事のスイッチをオフにして娘たちを保育園に迎えにいく。

明日を楽しむ方法を考える

私の業務が終わった瞬間から、夜のルーティンがはじまる。今日は長女の英会話がある日。保育園に迎えにいってから、英会話教室に行って、帰ってからはピアノの自主練もある。その前に夕飯かな。朝家を出る前に簡単に準備して温めるだけでいい状態にしてきたので、帰ったらすぐに夕飯にしよう。

他人からは忙しい1日に見えるかもしれない。やることはたくさんあるけど、1つずつ楽しみながらタスクをこなしていくのが我が家のスタイルだ。

ときどき、将来のことや人生設計について他人から聞かれることがある。でも、私は将来のことを考えるのを、やめた。結婚してから夫の仕事の関係で、5回も引っ越しをした。いくら長期的な視点で設計をしても、計画なんていくらでも変わるのが人生だ。計画があるからこそ、それが変更したときに、人は悩んでしまう。

だったらいっそのこと、“今”に集中しよう。今、目の前にある“課題”を毎日のルーティンにしていくこと。そしてそれ自体を全力で楽しむこと。そのほうが、明日はもっと楽しくなるはずだから。

Text : Kayo Murakami
Photo : Yuko Nara(numphoto.Inc)