外資系企業で、“耕す”ように働く| WORK STYLERのとある1日

日本企業とは文化や慣習が異なる外資系企業。今回のWORK STYLERは、日本企業から外資系企業に転職し、活躍している鬼塚航さんです。日本と海外、両方の働き方を知る鬼塚さんは、日本人ならでの視点を活かした農耕的なビジネススタイルを意識しているのだとか。そんな鬼塚さんの1日をのぞいてみました。

Profile

スマートラック テクノロジー香港 株式会社 日本支社

鬼塚航さん

中学2年から高校1年までの3年間アメリカに在住。大学卒業後、半導体の専門商社に入社。5年ほどしてから無線ICタグなどに使われるRFID製品の担当に抜擢。その後、アメリカのRFIDサプライヤー企業の日本支社立ち上げに参加。現在は同じくRIFD製品を扱うスマートラック テクノロジー香港 株式会社の日本支社にて、営業を担当している。

働き方の自由度が高いのがいい

今の会社に転職して良かったことの1つは、働き方の自由度が高いことだ。朝は8時30分頃に起きて、幼稚園に行く準備をする娘の様子を見てから出勤。通勤ラッシュに飲み込まれることもなく、10時頃に営業先のお客さんのところへ直接向かう。

わずか3人の日本支社ということもあり、働き方の細かな規定がないことが、逆に働きやすさにつながっているように思う。働く時間は自分で決められるし、在宅で仕事もできる。ややルーズな生活になっている気もするが、自分のペースで働けるのはありがたい。

午前中はアポが1件。向かったのは、定期的に足を運んでいる馴染みの得意先だ。

ファーマー的思考でビジネスの種を育てる

自分の仕事は、自社で扱うRFIDという無線ICタグ製品を日本市場でセールスすること。日本企業から注文を受けて、本国の工場に発注する。無線ICタグを使えば、商品管理の場面でバーコードを1つずつ読み込まずとも、無線で一括して読み込むこともできる。日々お客さんと話していると、これからますます需要が伸びていく製品であることを実感せずにはいられない。

外資系企業に勤めていると、海外とのミーティングが多いし、上司の国籍もバラバラ。社内のカルチャーは日本ではなく海外に近いと感じることもある。

欧米のビジネスの考え方はハンティングが基本。すでにあるビジネスを取りに行くというスタイルだ。それに対して日本をはじめとするアジアでは、ビジネスの種を育ていくという、たとえるなら農耕的な考えを持つ人が多い印象がある。すでに伸びているものを今刈り取るのではなく、種から時間をかけて育て、来年以降の収穫を目指す。それが日本のビジネススタイルだ。

僕らは外資系企業ではあるが、商品の売り先は日本。売るためには、その国の文化に合わせることが必要だ。そのため、僕自身もファーマーのような考えで仕事を進めている。商品を購入してもらうためには、時間をかけて良い関係を築くことが必要だ。インターネットであらゆることが手軽にできるようになったとはいえ、足繁く顔を見せることでようやく認めてくれる担当者もまだまだ多い。外資系というとスマートなイメージを持たれることが多いが、実は結構ドロくさい営業もやっている。

一方で、社内にはハンター的思考の上司ばかり。今の直属の上司は香港人なのでファーマー仲間として日本市場の特性を理解してもらえるが、その上の上司からはすぐ結果を出すことを求められることも。そのたびに、「我々は今ビジネスの種を育てている段階。今の投資が来年の成果につながる」ということを説明している。

実際のところ、発注書をもらうまではひたすら畑を耕すような感じだ。けれど、地道に耕作を続けていると、新規のお客さんからの注文が舞い込んだり、既存のお客さんとこれまでにない形のビジネスが生まれたりすることがある。この“収穫”のときこそ、仕事をしていて一番やりがいを感じる瞬間だ。

好奇心にまかせて、外資に飛び込んだ

得意先とのミーティングからオフィスに戻り、社内のスタッフに連絡事項を伝える。

*イメージ

オフィスとして利用しているのは八重洲のワークスタイリングの一室。ワークスタイリング フレックスで固定席を借りている。社員が3人ということもあり、L字型の大きなデスクを置いて広々と使っている。ここに引っ越してくる前は通常のオフィスビル利用も考えたが、利便性、会議室の多さ、自分たちで清掃をする必要がない点などを踏まえると、ワークスタイリングが魅力的だった。

午後は香港人の上司との電話ミーティングがある。ワークスタイリング内の電話ブースに入って会議の始まりを待つ。

海外とのやりとりは電話会議が多くなる。日本企業で働いていたときは上司が近くにいるし、上司の上司までもがいろいろな指示を出してくれる。しかし、外資に移ってからは環境が一変した。誰かから指示が飛んでくることはほぼなく、すべてが自己責任だ。

外資に入社してすぐ、「何か戦略があるんですか」「何かやることありますか」と上司に聞いたら、「それは君が考えるんだよ」と言われたことがあった。日本だと稟議書を回してみんなにハンコを押してもらい、何かあった場合は最後にハンコを押した人が責任を取ってくれる。でも、外資ではそれがない。「全部君が全責任を持ってやるんだよ」という考えなのだ。

何をどう進めるのかを決めるのは自分。売り上げを上げるためにこういう展示会にでたい、こういう新しい取り組みをしたいなどプランを自ら立てて実行していくしかない。権限を与えられる分、責任も大きいと感じている。

ときには、朝起きたら上司が突然クビになっていることもある。昨日の電話会議はなんだったんだと、振り回されることもしばしば。今の上司は香港人だけど、その前はアメリカ人、インド人、フィンランド人など何人も上司が変わった。だから上司に合わせて自分の対応を変えていたら何もできなくなってしまう。誰が上司になろうと、自分のやり方を主張し、貫き通すしかない。そういう刺激的なことが起こるのもまた楽しかったりするのだけど。

香港の上司とは頻繁に電話で話す。今年の売り上げが順調だから、持続的な成長を目指すためにもう1人採用したいと伝えると、OKの返事が帰ってきた。

耕す作業は楽しい


今の仕事にも、働き方にも満足している。けれど、いつかは日本支社のヘッドという立場で仕事をしてみたいという思いがある。自分が売れると思うもの、売りたいと思うものを揃えて販売するのは大きなやりがいがあるに違いない。今は42歳。50代後半になると動きにくくなるので、できれば5年以内くらいにはチャンスを掴んで実行したい。

就業後は、得意先と飲みに行く予定がある。お客さんとは腹を割って話せる関係性を築いて、何かあったときにまず声を掛けてもらえる存在になりたい。一人のファーマーとしては、こうした飲み会も大事な種まきの1つだ。

この種からどんな芽が出て、どんな大きさに成長するかは自分次第。地道に耕し、手をかけるほどに、収穫したときの喜びも、利益も大きくなるのだ。

Text : Kayo Murakami
Photo : Yuko Nara(numphoto.Inc)