会社ではなく、プロジェクトに就職する| WORK STYLERのとある1日

昔は“就職”ではなく“就社”と揶揄されもした日本の終身雇用。近年では新たな環境やスキルアップを求めて転職をすることが一般的になってきました。今回登場するWORK STYLER、Sansan株式会社の清水隆介さんもまた、転職を重ねてキャリアアップしてきた1人です。清水さんが会社を選ぶ基準にしているのは「関わるプロジェクトの面白さ」。どこに勤めるかよりも、何ができるかを重視する清水さんの仕事観を、ある1日の様子から垣間見ることができました。

Profile

Sansan株式会社
カスタマーインテリジェンス部
データソリューションアーキテクト

清水隆介さん

大学卒業後、独立系SIer、富士ゼロックス、グリー、リクルートなどを渡り歩く。6社目となるSansan株式会社には2018年1月に入社。現在はデータプリパレーションの専門家として、Sansanの新サービス「Sansan Customer Intelligence」の開発に関わっている。共著に『Tableauデータ分析 ~入門から実践まで~』(秀和システム)がある。

6度目の転職初日の朝


表参道の駅を出て、行き交う人をすり抜けて目指すビルへと向かう。多くの人にとって今日は新年最初の出勤日。だが、自分にとって今日は、新しい職場で働く最初の1日目でもある。

前職ではビジネスインテリジェンスの業務を担当し、主に自社サイトのユーザーデータを集めて、ユーザー行動を分析する仕事をしていた。手を挙げればどんなことでもやらせてもらえる環境にやりがいを感じていたし、まだ入社してから3年目だったこともあり、あと3年くらいはこのまま働いてビッグデータに関する経験を積みたいと思っていた。

でも、その会社で4年目を迎えることなく、自分は今、新しい職場のエントランスに立っている。

数ヶ月前まで転職は一切考えていなかったし、新しい職場がSansanになるとは思ってもいなかった。この偶然の巡り合わせとしか言いようがない出会いのきっかけは、「Eight」という名刺管理サービスだった。ある日突然、自分のアカウント宛てにSansanの方から「人材を探している」というメッセージが届いたのだ。

何度か担当の方に会って話を聞くうちに、最初は「今の会社を辞めるつもりはない」とお断りをしていたものの、次第にSansanがこれからやろうとしているプロジェクトの内容に強く興味を持つようになった。だから、自分の場合はSansanという会社に入ったというよりも、「プロジェクトにジョインした」という意識が強い。面白いプロジェクトがあって、その内容に惹かれたから転職をした。

オフィスの入り口でちらりと時計を見ると、8時50分だった。今日は朝から全社会議があるため、「9時少し前にきてください」と言われていた。ちょうどいい時間だろうか。入り口で人事の方を呼ぶと、すぐに全社会議が開かれる通称スタジアムと呼ばれるホールへと案内された。

自分にとって新しくて、刺激のある環境で働きたい

スタジアムには、年末年始の休暇を終えたばかりの社員たちがすでに集まっていた。この中にも、自分と同じように他社でやっていない取り組みに挑戦することに価値を見出した人がたくさんいるのかもしれない。入社前の食事会で何人かの社員の方に会ったが、話していると、みんな自分たちが手がけるプロダクトに自信を持っていることがひしひしと伝わってきた。

新年最初の全社会議は社長の挨拶から始まり、ときに朗らかな笑いを生みながら進んでいく。

会議の最後に「新入社員を紹介します」と自分の名前が呼ばれたので、スタジアムの前方に出て簡単な自己紹介をした。偶然にも、同じタイミングで入社した人の中に前職で同じ部署だった人がいるのだが、入社が決まるまでお互いにそのことを知らなかったという話を冗談っぽく話してみた。前の会社ではほぼ話したことがない人だが、こんな不思議な縁もあるのだなと思った。

全社会議が終わり、自分の席に案内されて同じプロジェクトのメンバーにあいさつした。その後は入社手続きの書類記入やPCの設定などを順次行う。こうした入社手続きを行うのは6回目だ。6回目の転職というのは、多いほうかもしれない。転職するたびに、周りから「新しい会社の環境や人間関係に慣れるのって、大変じゃない?」と聞かれる。大変といえば大変だが、自分としては1つの会社に居続けることのほうが難しい。1つの会社、1つの業務に慣れきってしまうことのほうがつまらないというか。

年齢を重ねるうちに1日や1カ月、1年があっという間に過ぎていくように感じることが増えた。毎日をぼーっと過ごしているつもりはないけれど、ずっと同じ業務をしていると、慣れてしまうためか時間が過ぎていくのがどんどん早く感じてしまう。なぜだろうと考えてみたところ、環境や業務内容に慣れてしまうと自分の中で刺激がなくなってしまうからではないか、という答えに辿り着いた。刺激がないから、何をしても印象に残らないのだ。

「業務に慣れる」というのは、与えられた仕事を効率的にこなせるということだし、会社にとっては役に立つ人材になっているということだ。でも、その状況だと自分にとっては新しく得るものが少なく、周囲に与えるばかりになってしまう。

だから、自分は常に刺激のある環境で仕事をしたいと思う。ここでなら新しい刺激を得られるだろうという場所に行って、今までやったことがない仕事に取り組んでいきたい。転職をするのはそのためだ。

30分の移動ロスがなければ、30分早く帰れる

入社手続きの一貫で、人事の方が社内制度やルールについて説明をしてくれた。あまりSansanについて調べずに入社を決めてしまったので、説明を聞いている中で初めて耳にすることもいくつかあった。

自分の場合はプロジェクトに興味を持って入社を決めているので、企業カルチャーは入社にあたってさほど重視していない。これまでにも根回しを重視する会社やとにかくスピード重視の会社など、さまざまな企業カルチャーに触れてきた。慣れるまでは「こんなに違うのか」と戸惑うこともあるが、いろいろな企業カルチャーに触れられるというのは転職を重ねるメリットの1つだと思う。自分の場合は、そういうことも含めていい刺激になっている。

Sansanでは面白い人事制度がいくつかあるようだ。平日に休んで土日に仕事を振り返ることができる制度「ドニーチョ」、在宅作業ができる制度「イエーイ」など。また、外出先からオフィスに戻らずに「ワークスタイリング」で作業することも認められている。

リモートワークが推進されているのは自分としてはありがたい。通勤時間の短縮につながるし、無駄な移動時間を30分減らすことができれば、30分早く家に帰れるはずだ。働き方改革が各所で話題になっているが、休みの取りやすさだけではなく、生産性を高めるためのインフラを整えることも必要だと思う。移動のロスを減らしたり、無駄なミーティングを減らしたりするためにできる工夫は自分としても積極的に取り入れていきたい。そういう点では、この会社は自分に合っているのかもしれない。

もちろん、リモートワークによって仕事を効率化するのと同時に、コミュニケーションも重視すべきだと思っている。ちょっとした雑談や飲み会なども、チームが成果を上げるためには必要なことだ。

入社初日の“儀式”はまだ続くが、いったんお昼休憩に出ることに。プロジェクトのメンバーがランチに誘ってくれた。入社前に会ったことがある人がほとんどだったが、改めて「今日からよろしくお願いします」と伝えた。これからこのメンバーと一緒に仕事をしていくのかと思うと、楽しみで仕方がない。

“プロジェクトに就職する”とはいえ、会社で働くメリットの1つは同じ目標を見ている人が集まって、お互いにスキルを補完しあえることだ。自分に足りないものを得ることができるし、一緒に働くからこそ達成できる大きな仕事もある。

どんな形で自分がプロジェクトに貢献していけるのかは正直手探りだ。でも、確かなことは、不慣れな環境に飛び込むことをストレスと感じるか、それとも仕事を楽しむための刺激と感じるかは、自分の気持ち次第だということだ。

メンバーと一緒にランチから戻る道すがら、ふと空を見上げてみた。今日からこの景色が毎日見る通勤風景になるのか――。

Text : Kayo Murakami
Photo : Yuko Nara(numphoto.Inc)