おもしろい経済のつくり方 | テーマエキスパートセッションvol.6

2019年2月13日、WORK STYLING東京ミッドタウンで、6回目となるテーマエキスパートセッションが開催されました。今回のテーマは「おもしろい経済のつくり方」です。金融、メディア、未来潮流——という各々異なる立場から「おもしろい経済」を盛り上げようとすでに実践されるゲスト3名をお招きしました。

今の時代、「経済」という言葉にはいささかネガティブなイメージがつきまといますが、そんな経済を“おもしろく”するのは、皆さん次第かもしれません。いったいどんなことが語られるのか、イベントの模様を振り返っていきます。

招かれた3名のゲスト——「おもしろい経済」創出の実践者たち

6回目となるテーマエキスパートセッション。今回のテーマは「おもしろい経済のつくり方」です。「おもしろい経済」とは何なのでしょうか。

まず、この日お迎えしたゲスト3名が、ショートピッチのプレゼンテーションを行いました。その内容をダイジェストで紹介します。

最初の登壇者は、株式会社FOLIO代表取締役CEOの甲斐真一郎さん。イベントレポートとして公開もしている、テーマエキスパートセッションVol.1「フィンテック×自動車×働き方」にもご参加いただきました。

甲斐さんが事業展開するのはテレビCMでもお馴染みのオンライン証券「FOLIO」(フォリオ)。「VR(仮想現実)」「ペット」「人工知能」など、それぞれの会社の事業内容や財務諸表を見ずとも、自分が気になるテーマを選択して投資をすることができます。ある種“お堅い”イメージがつきまとう“投資”のハードルを下げるFOLIOのコンセプトは「経済圏から生活圏へ」。2018年にはLINEと資本業務提携を締結し「LINEスマート投資」の基盤技術にも認められています。

2人目の登壇者は、株式会社ニューズピックス取締役のビジネス開発責任者・坂本大典さん。坂本さんは大学在学中、株式会社ユーザベースへインターンとして参画。後にソーシャル経済メディア「NewsPicks」事業の立ち上げにも携わりました。以降もNewsPicksビジネス部門を牽引。17年にはNewsPicks 取締役に就任しています。感度の高いビジネスパーソンにはすっかりお馴染みのサービスです。坂本さんは「これからは『アカデミア』や『コミュニティ』にも力をいれたい」と、今後の戦略を述べました。

最後の登壇者はNPO法人ミラツク代表理事の西村勇哉さん。2011年に設立された「ミラツク」は、未来構想を実現するプラットフォームづくりと新規事業開発の支援に取り組むリサーチャー集団です。具体的には広範囲のエリアを対象に、起業家・企業・NPO・行政・大学等、多領域のネットワークを築きながら、未来潮流の発掘を行い、ツール化した情報を基盤とした新たな企画の実現や新領域の事業の実現支援に取り組んでいます。

各人のショートピッチの後、質問投稿アプリ「Sli.do」(スライドゥ)に寄せられた質問にゲスト3名が回答。ビジネススタイリストの橋田が司会進行役を務め、後半のプログラム「クロストーク」が始まりました。

新規事業の立ち上げ——絶対必要なこととは?

橋田 今回のテーマ「おもしろい経済」。なぜこのテーマに行き着いたのか、ビジネススタイリストの立場からご説明します。

ワークスタイリングの会員には、会社で新規事業に携わっている方がとても多いです。そして多くの方は「会社から新しいことをつくれと言われるけれど、課題が見つからない」「あるいは、見つけ方すらわからない」ということで悩んでいます。

そのときに私が思うのは、FOLIOのコンセプトでもある「生活圏に根付く顧客体験」です。すなわち新規事業は「自分事化」から始めてもよいのではないか、と。

甲斐 そうですね。皆さんご存じのエピソードかもしれませんが、私たちも業務提携を結んでいるLINEさんは、2000年にインターネットサービス会社NAVERの100%子会社として設立されています。

2011年東日本大震災の際「大切な人と連絡がとれない」という方が大勢いるなか、当時のLINEエンジニアがメッセンジャーアプリをつくり、2011年6月、現在のLINEアプリがリリースされました。

当時は先行する競合サービスもありましたが、少数精鋭のエンジニアたちは心血を注いだといいます。きっかけはおそらくテレビか何かの映像。そしてそこに「ペイン(痛み)」を感じた。だからこそ「やりきる」という覚悟が生まれ、誰もが使っているアプリになったのではないでしょうか。新たな事業を生み出すときに大事なのは「パッション」だとつくづく思いました。

坂本 たしかに事業をつくるときに「パッション」はマストですね。私の視点から1つ付け加えるならば、事業のつくり方には2つのアプローチがあると思います。

1つは「社会を俯瞰的に捉え、今後市場が大きくなる領域」でサービスを考える。もう1つは「自分がほしいサービス」をつくる、です。世の中で広く知られるサービスでいえば「メルカリ」は前者で、「NewsPicks」は後者ではないかと思っています。

自分がほしいものをつくるメリットは「高い成功確率」。それに対し、事業としてスケールする可能性が高いのは、市場から逆算するほうです。新規事業を考えるときには「その両パターンがある」という前提のもとで進めたほうがよいと思います。

西村 私が大事だと思うのは「自分で決める」でしょうか。例えば、ミラツクでは働く時間・場所・内容を自分で決めてもらっています。指示命令ではなく相談を通じて決めていく。普通に働いていると1日のなかで自分が決断する瞬間って意外と少なかったりします。いかに「自分で決める」を日常化できるかが鍵だと考えています。

もう1つ新規事業で大事なのは「自分の手を動かす」ということ。頭のなかで考えていても何も前に進まないものです。だから分からないことは意欲的に調べてみればよいし、手をつかって試作をしてみれば、そこからアイデアが大きくなったりもします。いきなり“100”を目指すのではなく「とりあえず、やってみる」がとても大切ですね。

「最初の一歩」に必要なマインドセット


橋田 個人的には皆さんのご意見に大賛成です! おそらくこの場に来ている方はすでに一歩踏み出しているのかもしれません。しかし「パッションを原動力に覚悟を決め、自分で決断する」のに、ひるんでしまうという方も多いと思います。もし、そうしてひるんでしまったときに「最初の一歩」をどう踏み出せばよいのでしょうか。

甲斐 私のパッションに関していえば、たいていのことは「WHY」から始まっていますね。HOW(どうやって)という疑問が生じがちですが、それって案外、“Google先生”が知っていたりする。

何のサービスにしても「1番手」は大変で、2番手以降の後発はHOWを調べたら前例を知れるし、場合によってそこから2番手につき、いっきにアクセルを踏んだらトップに躍り出ることもあります。だけど、やはり新規事業創出ではWHYから始める視点がとても大事。WHYの答えは「自分の中にいるGoogle先生」でしか導き出せませんから。

坂本 私からもお答えすると、私がユーザベースに学生インターンとして参画したのは2008年のことですが、リーマンショックの直後にスタートアップに行きたいという人は変わった人が多かった。(笑)そんな時期に業界に身を投じた私が思ったのは、「こういう変わった人たちでも事業を作れるんだ」ということ。それと同じで、新規事業の始める方は「自分でもできるのか」などと考えすぎずに、まずはじめてみたらいいと思います。

西村 根本的な話として「新しい何かを始める」と「計画立てて実行すること」は真逆の性質を持っています。新規事業が該当する「新しい何かを始める」というのはまさしく「ブリコラージュ」。もとはフランス語で「やりながらつくっていく」という意味ですが、計画を立てることが不可能なんです。すなわち、計画を立てて前に進もうとしても、後ろに進んでしまう。やってみないことには次が見えないですし、やってみることはたとえどんなことにも価値があると、私は考えます。そうやって一歩踏み出せば、そこに必ず違う世界が見えますし、そこから次の方向性が見えてくる。方向性を確認しながらもし違っていれば、間違ってから軌道修正すればよいのですから。

こうして、この日のイベントは終了しました。「新規事業に絶対的に不可欠なのはパッションである」「小さくてもいいから、とりあえず前へ進めてみよう」「ふだんの仕事とは違い、計画ばかり立てていてはいけない」——。

この日でゲストが提言したトピックは、企業の規模や個人の素養等に関係なく、どんな方の“思い”からでも始められるものなのではないでしょうか。このイベントをヒントに、多くの方が前へ踏み出していただければ何よりです。

Text:Hirotake Yasuda