芸人でIT企業役員の厚切りジェイソンさんが疑問に思う、日本の「Why?」な働き方

リモートワークの導入や副業の解禁など、徐々に変化の兆しが見えているとはいえ、まだまだ日本の働き方は改善の余地が多くあるように感じられます。

そこで足かせになっているのが古い価値観。メールは「お世話になります」から始まるのがデフォルトだったり、満員電車のつらさを知りつつも毎朝9時に出社していたり。働き方が見直されている今だからこそ、あらためて普段当たり前のように行っているさまざまなことを見直してみるべきなのかもしれません。

そこで今回は、芸人として活動する傍、IT企業の役員も務める厚切りジェイソンさんに「Why Japanese Business Person!?」と叫ばずにはいられない、非効率なことについて思い切りぶった切っていただきました。

学生時代から常に二足のわらじで生きてきた

アメリカ・ミシガン州に生まれたジェイソンさんは、17歳のときに飛び級でミシガン州立大学に入学。コンピューターサイエンスを専攻しながら、兼ねてから興味があった日本語を勉強するようになります。

「僕は学生時代から2つのことを同時にやっていて、片方が行き詰まったら、もう一方で息抜きをする。それをずっと繰り返してきたんです」

そう話すとおり、大学卒業後にはゼネラル・エレクトリック(GE)グループで働きながら、イリノイ大学の大学院で修士を取得。そして来日してからは、日本のIT企業テラスカイの米国法人で役員を勤めつつ、芸人として活動しています。

特に最近は副業を解禁する企業も増加中。ジェイソンさんのように複数の仕事を持つことがスタンダードになることも考えられます。ちなみに、ジェイソンさんはどのようにして時間を捻出しているのでしょうか?

「時差の関係があるから、基本的なやり取りは深夜に行っています。どうしてもアメリカに行かなくてはいけないときは、芸人の仕事と被らないように調整してもらいますね。でも、最初のうちは週末や有給を使って芸人の仕事をやろうと考えていたんです。それが今のようにいろんな仕事が増えてきたから、僕が芸人として活動することで会社にどのようなメリットがあるかを説明しながら段階的に活動を広げてきました。例えば、芸人の仕事をすることでプレゼン力が上がったとか、認知度を活かすことで集客が増えるとか。そういうポイントをきちんと説明することで両立が実現できるようになりました」

とはいえ、すべての人が副業をする必要はないとジェイソンさん。

「仕事で満たされないことがあれば、外に活路を見出すのはいいと思います。でも、別に仕事じゃなくてもいいんですよ。自分のやりたいことをやれる環境を見つけることが大切です」

日本の企業はまだまだ無駄だらけ!

そんなジェイソンさんの働き方のひとつが徹底した無駄の排除。例えば、メールでの丁寧なやりとりは必要ないのでは?と疑問を呈します。

「他社ならまだわかりますが、同じ社内にいる人にも『お世話になります』とか『よろしくお願いいたします』とか打つ必要ってありますか? 僕が会社の人に送るメールはすごくシンプルです。要件だけ。会社の人からも『ジェイソンさん、よろしくです』で終わり。でも、本当はこれでも長い。『了解』これだけで伝わりますよ」

また、会議の仕方にも疑問があるとジェイソンさんは話します。

「日本の会議は、会議じゃなくて報告会ですよね。本来であれば、きちんと意見交換ができる場になってないといけないんですけれど、すでに根回しが済んでから行われることが多い。それならば、メールでいいじゃないですか。なぜわざわざ時間を取って確認する必要があるのでしょうか。あとは終業時間が17時とかに決まってるのに、その1時間前に2時間以上かかる会議が入っていたりする。そしたら終わりは18時じゃないですか。不思議ですよね」

そのうえで、この始業時間や終業時間にも疑問があるとか。

「そもそも始業時間や終業時間は必要ですか? 時間ベースではなく、結果ベースで働いた方がいいと思います。働きたい人は好きなだけ働けばいいし、働きたくない人は働かなくていい。どこの国でもトップクラスの人は尋常じゃないくらい働いていますよ。それで結果を認められて出世する。それは当然のことです。でも、出世だけが人生のすべてじゃないからプライベートを優先する人がいてもいい。その選択は個人が自由に決めればいいんですよ。僕たちは資本主義社会を生きているわけですから」

また、日本ではおなじみの光景とも言える名刺交換の時間もロスに感じるそうです。

「名刺交換は要らないです。なぜなら、そのうちのほとんどがその日で終わる関係だから。残るのは名刺だけ。みなさんも経験あるでしょ? 名刺交換の時間をなくしてすぐ本題に入れば時間短縮になりますよね。それに今はメールでコンタクトを取る機会も増えていますから、直接会う前にやりとりしているケースもあると思います。そうしたらメールでも挨拶して、名刺交換のときにも挨拶することになります。どれだけ挨拶したいんですか!」

そもそも出勤することってそんなに大事ですか?

特にホワイトワーカーはパソコンやスマホさえあれば仕事ができる時代。「時間や場所に縛られていては、優れた結果を残すことはできない」とジェイソンさんは声を大にして話します。

「僕は仕事で日米を行き来することがあるんですけれど、その移動時間で大体8時間分はパソコンを開くことができます。そうしたら1日分の仕事ができますよね。会社に行く必要はありません。でも日本の会社は、出社すること自体に価値が置かれることが多々ある。それでただ座っているだけ、ときには居眠りしている人もいる。あと、日報なんて電車に乗りながらメールで書くだけでいいと思うんですよ。それなのに、わざわざ外回りから会社に帰ってきて日報を書くなんて無駄以外の何物でもないですよ」

そして極め付けは、悪天候で交通網が麻痺しているにもかかわらず、出社しようと努力している人の存在だ。

「台風や大雪のときにも出社しようとする人がいますよね。でも、そんな状況で出勤しようとしても、いつもの数倍以上の時間がかかり、さらに肉体的にも精神的にも疲労困憊になる。そうした状態で普通に仕事できるわけがないんですよ。それで大したこともできずにまた数時間かけて悪天候の中を帰っていく。どうしてそんなことをするんですか? 自宅で仕事をしていた方がよっぽど結果が出せるじゃないですか。意味がわかりません!」

仕事は大切だけれど、人生のすべてではない

無駄な時間を削り、最大の結果を出す。私たちに欠けているのは、この意識かもしれません。そのためには、断ることも必要だとジェイソンさんは説明します。

「『まずは会って話しましょう』と言われるのがすごく嫌いなんです。何も起こらないことがほとんどだから。『私の時間を返して!』と言いたい。それに日本では、時間がある人には何を頼んでもいいという雰囲気がたまにありますよね。僕も英訳や和訳を頼まれたり、使うか使わないかわからない資料の作成をお願いされることがありました。でも、それらはすべて断りました。なぜなら、それは僕の仕事ではないから。もし必要があるのならば、その証明をしてほしい。それがないのであれば、本来その仕事をするはずだった人が行うべきですよね」

「働くことは大切だけれど、人生は仕事じゃない」とジェイソンさん。会社のためという考え方に固執していると、何が正常で何が異常かわからなくなることも多くなってしまうのではないでしょうか。

そして、日本人は「朝9時に出社する」「名刺交換から会話を始める」など型にこだわりがちなのかもしれません。しかし、その型を壊してみたら? もしかしたら、今よりずっと快適な働き方が実現できるかもしれません。

Profile

厚切りジェイソン

芸人。ワタナベエンターテインメント所属。デビューからわずか4ヶ月後の2015年2月に「R-1ぐらんぷり2015」で決勝進出を果たし、大きな注目を集める。また、株式会社テラスカイの米国法人TerraSky Inc.の役員としての顔も。それぞれの経験を活かしてパラレルに活動している。著書に『日本のみなさんにお伝えしたい48のWhy』(ぴあ)『猫CEO』(飛鳥新社)などがある。