ONE JAPAN発起人に聞く。大企業病から抜け出し、イノベーションを生み出すためには?

「セクショナリズム」「事なかれ主義」「縦割り主義」といった多くの企業が陥りがちな非効率な企業体質。これらを世間一般には「大企業病」と呼びます。

意欲を持って入社した若手社員たちがいつの間にか挑戦する気概を失くし、イノベ―ションが生まれにくくなっていく。この負の連鎖をどうやって止めればよいのでしょうか。今回は、企業の枠を超えて若手社員の有志が集まり、組織の活性化に挑んでいる有志団体「ONE JAPAN」の発起人、濱松誠さんと山本将裕さんに、企業改革の方法を伺いました。

大企業病は大企業特有の病ではない

「ONE JAPAN」は、大企業で働く20~30代の若手・中堅社員を中心に構成された有志団体。所属する組織内に存在する新しいことをやってはいけない空気を打破し、挑戦する場へと変えるために週末などを利用して活動しています。

濱松「『大企業病』と聞くと、大企業だけで起きている問題のように聞こえますが、実際は中小企業も同じ。内定時や新入社員時に『こんなものを開発したい』『達成したい目標がある』と強い志を持っていたにもかかわらず、色々な壁に阻まれて思ったような動きが取れなくなり、最終的には「どうせ言ってもムダ症候群」に染まってしまう。やってもやらなくても給料はもらえますから。とはいえ、2025年には、労働人口の中心を担っていた団塊世代が75歳になります。それ以降は大企業でも人手不足が深刻化し、どんどん立ちいかなくなると思います。だからこそ、ONE JAPANのような活動が必要なんです」

山本「やりたいことができて、実績に見合う対価が貰える環境であれば、会社を辞める確率ってグッと下がると思うんです。でも、実際にはそうなっていない。しかも優秀な社員ほど先に辞めていってしまうから、残された仕事が別の優秀な社員に集中していく。そうするとその社員も疲弊して辞めていくという悪循環に陥ります。その構造をなんとかしないといけないと思っています」

現在、ONE JAPANでは「代表者会議」という集会を月に1度のペースで開催しています。毎回50〜100人が集まり、各々が抱える問題に対してディスカッションや、各社で実施している取り組みのシェアを行なっています。
実際に、三越伊勢丹の「CARITE」という衣料品のシェアリングサービス(有料レンタル)や、パナソニックとマッキャン・ワールドグループとベンチャーとの共同プロジェクト「ゲノムハウス」など、ONE JAPANを通じてアウトプットが出始めています。

山本「何も行動せずに『大企業病』だと言ってるのは、言い訳にしかならないと思うんです。組織を変えようとすると、最初は批判もあるし、『そんなことをして何の意味があるの?』とかいろんな人から言われます。けど、自分たちから意見を発信し続けることで、仲間が一人、二人と増えてきました。社内で新規事業開発の一環で、アクセラレータープログラムのプロジェクトを立ち上げましたが、それも発信することで多くの仲間が集まって実現できました。そのアウトプットが認められ、部署の立ち上げにも成功しました」

濱松「僕らのところにはいろんな方から相談があります。が、実際に話を聞いてみると圧倒的に行動していないことの方が多い。中には一度反対にあっただけでやめてしまっていた事例もありました。でも、失敗なんて当たり前。起業家なんて『成功するわけない』と言われ続けても頑張るわけなんで。失敗すらもチャンスと捉えて、行動し続けることが大切なんです」

目立つ個がチームを組むことで、大きな力になる

「ONE JAPAN」の設立は2016年9月。2年以上の月日が流れた今では、50社1700名が参加するまでの巨大コミュニティに成長しました。この功績も濱松さんや山本さんの積極的な活動があってこそ。では、これまでの経験を通じて、企業体質を変えていくために必要なものは見えてきたのでしょうか?

濱松「一つは圧倒的な実績を積み重ねて出世するか、社会に旋風を巻き起こすヒットメーカーになること。もう一つは声をあげて仲間を集めること。それも10人、100人という規模ではなく、1000人単位で。よく、どちらの方が重要かという議論が巻き起こるのですが、ゼロサムではなく、両方がバランスよく必要だと僕は考えています」

山本「会社の中でも目立つ個人って部署ごとに点在していると思うんです。そういう人たちが集まってチームになれば、ものすごい力を発揮できます。声をあげることをよくフラッグに例えることがありますが、仲間が大勢いた方が立てやすいですよね。しかも1本じゃ絶対に会社は変わりません。だからこそ、いろんなフラッグを立て続けることが大切なんじゃないでしょうか」

そうした考えもあり、ONE JAPANでは加盟条件を個人ではなく団体としています。一人では変えられないことでも、ある一定の数が集まれば変革を起こす機運につながるというわけです。

続けていくこと、継承していくことが変革につながる

とはいえ、1年や2年で企業改革は達成できないと濱松さんは付け加えます。

濱松「そもそも経営者でもない自分が企業変革について論じるのは恐れ多いのですが、どんな企業でも、たった数年で変わるなんてことはないんですね。それは組織が大きければ大きいほど。慣習もあるし、雇用関係もあるし、人間関係もあるから。それでも、挑戦したい人、一歩踏み出したい人、新しい空気を作りたい人の背中を押したいと考えて活動を続けています。というのも、僕たちはCEOでもCOOでも人事役員でもないから、外科治療的な組織改革はできないんです。でも、内科治療的にコツコツ、弱火の状態で火を絶やさないように広げていくことはできます。そして、ONE JAPANのメンバーが課長や部長といったポジションについたときに、若い人たちに手を差し伸べられる存在になっていく。それが僕たちに求められていることなんだと思います。そうなるためには、できる限りたくさんの挑戦をして失敗をする。それの繰り返しです」

ちなみに、濱松さんは2018年12月末にパナソニックを退社。ONE JAPANへの関わりは継続するが、外側から携わっていくことを考えているとか。そしてこれを機に大企業だけでなく、日本全国の地域やベンチャー企業などとも有機的につながっていくことも想定しているそうです。

濱松「これからの時代は、企業と個人の関係も大きく変わってくると思います。現に一度退社した会社に出戻りする人なども増えています。「終身信頼」などと言われたりもしますが、企業を辞めたらそこで関係が途絶えるわけではなく、その後も関係性を育みながら、共同プロジェクトをやったり、タイミング次第で再入社も選択できる。そういうキャリアを形成する人が増えていくんじゃないでしょうか。僕はONE JAPANで培ったものを活かしながら、強い人も弱い人も関係ない社会を作っていきたいなと考えています」

組織が大きくなればなるほど、大企業病のような弊害が生じることもありますが、その一方で人材、歴史、ブランド、資金などのリソースが豊富に揃っているのも事実。それらを活かすも殺すも、社内にいる人たちの意志次第なのかもしれません。もしこれから動き出そうと考えている人は、濱松さんや山本さんのように声をあげ、仲間を集めるところから最初の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

Profile

濱松誠

1982年京都府生まれ。2006年パナソニックに入社。海外営業、人事、ベンチャー出向、家電部門の新規事業担当を経て、2018年、パナソニックを退職。本業の傍ら、2012年、組織活性化とオープンイノベーションをねらいとした有志の会「One Panasonic」を発足。社内を中心に3000人の規模まで拡大させる。日経ビジネス「2017年 次代を創る100人」。2019年2月から日本一周、5月から1年間夫婦で世界一周を予定。

Profile

山本将裕

1987年東京都生まれ。2010年NTT東日本入社。石巻、仙台で法人営業を経験後、現在のビジネス開発本部で勤務。東日本大震災時には、ホームレスになりながら復興活動に取り組む。2015年にNTTグループの有志団体「O-Den」を立ち上げ。NTTグループを横串にして、人と人との縁を繋ぐことで、会社や社会を変えるべく活動を行なっている。また、仕事では、アクセラレータープログラムでスタートアップ連携の推進を行っている。

Profile

ONE JAPAN

2016年9月設立。発起人は、パナソニックの濱松誠、NTT東日本の山本将裕、富士ゼロックスの大川陽介の3名。現時点でトヨタ、日本郵便、JR東日本など50社1700名の若手・中堅の有志社員が加盟。共創と新しい働き方の推進に向けて取り組んでいる。2018年9月、「仕事はもっと楽しくできる 大企業若手50社1200人 企業変革ドキュメンタリー」(プレジデント社)を上梓。内閣府主催「第1回 日本オープンイノベーション大賞」を受賞。
*所属は当時

Text : Kodai Murakami
Photo : Yukiko Tanaka