【2024年】フリーアドレスは失敗する?
原因と課題、本当に快適な働き方とは

働き方の多様化やICT技術の進歩により注目を浴びているフリーアドレス。テレワークなどの働き方改革の推進により導入企業が増えたものの、自社には合わなかった、かえって生産性が下がったなどの理由から、コロナ禍が落ち着くと同時に従来の働き方に回帰する企業もあります。
この記事では、フリーアドレスの基本を解説するとともに、導入に失敗する原因や課題、有効に活用するための方法についてご紹介します。

自席を設定せず、デスクに固定電話を置かないオフィスレイアウト。オフィスワークにこだわらないABW(Activity Based Working)としても利用でき、生産性・創造性の向上を享受できるレイアウト

Index

  1. フリーアドレスとは?
  2. フリーアドレスのメリット・目的
  3. フリーアドレスのデメリット・失敗する原因
  4. フリーアドレスが定着しない企業・部署の特徴
  5. フリーアドレスと相性のよい企業・部署の特徴
  6. フリーアドレスを有効活用するためのポイント
  7. 失敗しないフリーアドレス導入の流れ
  8. フリーアドレス以外の選択肢を検討するのも有効
  9. まとめ

フリーアドレスとは?

「フリーアドレス」とは、働く人それぞれが好きな席を選んで働くワークスタイルのことです。あらかじめ決められた固定席で働く従来のオフィスでは、社員のコミュニケーションが周囲の席の人に固定化される傾向にあります。また、社員の数だけ座席を用意する必要があるため、まとまったオフィススペースを確保しなければなりません。

フリーアドレスは、こうした固定席のデメリットを解消できる方法として、コミュニケーションの活発化やワークスペースの有効活用を目的に導入されてきました。

また、フリーアドレスの導入により、自然と他部署の人との会話が増えるなかで、新しいアイデアやイノベーション創出の機会を生みだすことも狙いの一つとされています。

1.1 フリーアドレスが注目される背景

フリーアドレスは、1987年に日本で生まれたオフィスレイアウトの方法です。当時はOA機器をはじめとしたオフィス機器が増え、多くのオフィスでスペース不足が問題となっていました。
そこで、日中は外回りでほとんど使われない営業職のデスクをフリーアドレス化し、限られたスペースを有効活用しようと考案されました。その後、大企業を中心に広がりを見せましたが、当時の技術ではシステム上の課題も多く、一般的に定着するには至りませんでした。

フリーアドレスが再度注目されるきっかけには、ICT技術の進展、政府による働き方改革の推進、そしてコロナ禍による出社率の低下などが挙げられます。普及の障害となっていたシステム上の課題も技術の進歩によって解消され、多様化する働き方に応えるオフィスの形として注目を浴びました。

しかしコロナ禍が落ち着いてきた近年では、後述する理由により、一度導入したフリーアドレスを廃止する企業も出てきています。導入検討の際は、目的とゴールを明確化し、デメリットも理解したうえで、運用方法を慎重に考える必要があります。

フリーアドレスのメリット・目的

自席を設けず、固定電話や個別デスクを置かないフリーアドレスやABW(Activity Based Working/アクティビティ・ベースド・ワーキング)のようなレイアウト・デザインで集中力や生産性が向上している従業員の様子

では、フリーアドレスの導入には具体的にどのようなメリットや目的があるのでしょうか。

2.1 オフィス空間を有効活用できる

フリーアドレスでは、実際に出社して働いている人の分だけデスクがあれば問題ありません。所属社員の人数分だけデスクを用意しなければならない固定席スタイルに比べ、デスクの数を減らせるのがメリットです。デスク削減で生まれた空間は、コミュニケーションスペース、防音ブース、会議室などのABW(Activity Based Working)としてオフィスレイアウトし有効活用できます。
ABW(Activity Based Working)とはオフィスワークにこだわらず、業務内容に応じて自宅やカフェなどを働く場所にできることです。作業環境の選択肢を広げることで、生産性・創造性の向上を享受できるメリットがあります。

「ABWとは?意味やフリーアドレスとの違い、メリットやオフィス活用方法を解説」を読む▶

2.2 チームやプロジェクトで臨機応変に集まれる

一人の社員が複数のチームやプロジェクトをまたぐ場合、フリーアドレスなら座席を自由に選べるので、座席に縛られることなく「人」中心で臨機応変に集まれます。この柔軟さもフリーアドレスのメリットといえるでしょう。
またメンバーを大幅に増員するなど組織変更がある際も、対応がしやすいのがフリーアドレスの強みです。レイアウトを大幅変更したり、部署ごと別室へ移動したりといった手間が掛かりません。

2.3 社員間のコミュニケーション促進につながる

固定席の場合、どうしても近隣の席に座っている人とのコミュニケーションに終始しがちです。一方、フリーアドレスで毎回席が変われば、普段あまり話さない社員とも自然に交流が生まれるため、社員間のコミュニケーションの活性化を享受できるでしょう。
上司と部下、先輩と後輩など、上下関係による座席配置も取り払えば、風通しのよい職場環境の実現にもつながるでしょう。

2.4 ペーパーレスやオンライン対応が進む

フリーアドレスを効率的に運用するためには、ペーパーレス化が欠かせません。毎回紙の書類を持ったまま座席を移動するのは不便なうえ、書類を紛失するリスクも高まるためです。加えて、どの座席にいても業務に従事できるオンライン環境の整備も必須です。フリーアドレスを導入すれば、必然的にペーパーレス化やオンライン対応が進み、コスト削減や業務効率アップにつながります。

フリーアドレスのデメリット・失敗する原因

フリーアドレスに向いているオフィスレイアウトの実施や会議室や防音ブースの設置、勤怠管理や誰がどこで働いているか在席状況を確認できるツールの導入、ノートパソコンやモバイル・ICT端末の配布や共有備品の整備、社内の無線LANの完備、その他運用ルールやマニュアル作成など、フリーアドレスのための環境整備が多岐に渡り困るワーカー

さまざまなメリットがあるフリーアドレスですが、定着せず廃止する企業も増えています。ここからは、フリーアドレスが抱えるデメリットと、導入に失敗する原因について見ていきましょう。

3.1 業務がフリーアドレス向きではない

そもそも業務上フリーアドレス向きではない企業や職種もあります。例えば、人事・経理・法務などは個人情報や機密情報を扱うため、座席が毎回変わるフリーアドレスにはセキュリティ面においても不向きといえるでしょう。フリーアドレスに向いている部署・企業とそうでない部署・企業については後ほど解説します。

3.2 在席状況や社員の居場所が把握しづらい

フリーアドレスは自席がなくオフィスの自由度が高い半面、出社のたびに空席を探すことに苦痛を感じる社員もいるようです。また、誰がどこにいるかを把握しづらいため、会話したい社員の居場所を毎回探すストレスもあります。
そのためチャットツールや在席状況がわかるICTシステムを導入することで、空席探しや社員の居場所探しをする必要がなくなるでしょう。

3.3 部署やチームへの帰属意識が薄れる

他部署との連携の活性化によりアイデアやイノベーションの創出機会を生みだすことがフリーアドレスの狙いの一つですが、逆に部署やチームなど組織への帰属意識やモチベーション、チームワークが薄れることもあります。部署やチームで定期的にミーティングを持ち、意思統一を図る必要があります。

3.4 環境構築にコストと時間がかかる

フリーアドレスは省スペース化、ペーパーレス化、オンライン対応によってコスト削減が見込めますが、環境を構築するためにはコストと時間がかかります。社員一人ひとりにノートパソコンやモバイル端末を持たせる、社内の無線LANを整える、フリーアドレスでも使いやすいデスクや会議室ブース・防音ブースを新たに購入するなどの投資が必要です。
加えて、フリーアドレスに適したツールを導入した場合には、社員教育にかかる時間も考慮しなければなりません。

3.5 勤怠管理や評価、教育が難しくなる

フリーアドレスでは、誰がどこで仕事をしているのかわかりづらくなります。部下の働きぶりが可視化されにくくなるため、管理者からすると評価や教育に支障を来すケースもあるでしょう。そのため、報連相を円滑にするルールやマニュアルの作成と徹底、勤怠管理ツールの活用などを検討する必要があります。

3.6 結局同じメンバーで集まってしまう

好きな席を選べるとなると、仲のよいメンバーやグループで固まるケースも出てきます。特定の社員で毎回固まってしまうと、普段話さない社員とのコミュニケーションの活性化は図れず、フリーアドレスの目的が果たせないだけでなく、業務上必要のない雑談が増えてしまうケースもあります。
メンバーが固定されないようフリーアドレス導入の目的を周知徹底するとともに、連続で同じ人の隣や周囲に座らないなどのルール整備が大切です。

3.7 業務に集中できない

オフィスのレイアウトによっては、ワークスペースの会話や騒音が耳に入ってきてしまい、集中力を妨げてしまうこともあるでしょう。その結果、かえって生産性が下がりフリーアドレスが浸透しない要因になってしまいます。
コミュニケーションを活性化させたいならば、オフィスを回遊できるようジグザグにデスク配置をおこない、逆にワークスペースとは別に会議室や執務室、防音ブースを設置するなど、集中力の妨げにならないオフィスレイアウトにするなど工夫をしましょう。

3.8 書類や荷物管理でトラブルが生じる

固定席であればデスクに付属した収納スペースで持ち物を管理できますが、自席を持たないフリーアドレスではそうはいきません。私物やノートパソコン・モバイル端末などを含めた荷物を、離席のたびに持ち運びするため負担が掛かります。
持ち運ぶ際には、紛失などのトラブルにも繋がりかねないため、書類や荷物の管理方法には対策を講じる必要があります。
私物含め荷物の管理トラブルを防ぐためには、鍵付きのキャビネットやパーソナルロッカーの設置が有効でしょう。

3.9 席が足りなくなる

フリーアドレスの導入にあたっては、想定される出社率に合わせて座席数を減らすのが一般的です。このため、想定よりも多くの社員が出社した日には席が不足する事態も考えられます。
ニッセイ基礎研究所の分析によれば、2023年4月最終週の東京のオフィス出社率は76.2%。他の大都市でも8割前後となっていることから、一定の座席数は確保したほうが安心でしょう。

参照:ニッセイ基礎研究所 「コロナ禍におけるオフィス出社動向-携帯位置情報データによるオフィス出社率の分析

フリーアドレスが定着しない企業・部署の特徴

フリーアドレスやABW(Activity Based Working)の導入には、出社ルールの他、共用設備・備品の利用ルール、私物取り扱いルール、セキュリティガイドラインなどを儲ける必要性を説く女性

フリーアドレスは、企業や部署によって向き不向きがあります。
フリーアドレスは出社率に合わせて座席数を減らせることがメリットであるため、そもそも社員の在席率が高い企業では定着しづらいのが実情です。たとえ導入しても空席を探すのに一苦労でしょう。
また前述のとおり、個人情報や機密情報を多く取り扱う部署はフリーアドレスに向いていません。人事・経理・法務などバックオフィス系の職種が該当します。

ワークスタイリングFLEXは、拠点スタッフによる入退室管理やセキュリティカメラによる警備など、セキュリティ体制が充実。個人情報や機密情報を多く取り扱う企業・部署でも、フリーアドレスの導入を検討できます。

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出社率の高い事務職、デスクトップパソコン・大型モニターでの作業を必要とするエンジニア、クリエイターや設計職なども注意が必要です。こうした職種の社員を多く抱える企業では、フリーアドレス導入前にどうすれば定着するか、そもそも導入すべきかをよく検討することが重要です。

フリーアドレスと相性のよい企業・部署の特徴

外回り営業やテレワーク社員が多く在席率が低い企業で働くビジネスマンがモバイルで会話している様子

反対に、外回り営業やテレワーク社員が多く、日頃から出社率が低い企業・部署は、フリーアドレスに向いています。座席数を減らしてオフィス空間を有効活用できるでしょう。
社員が部署間をまたぐようなプロジェクトが多い企業や、固定電話の使用が少ない企業なども相性がよいといえます。社員同士のコミュニケーションが活発になり、新たなアイデアが生まれやすくなります。

外回りの多い業種であれば、タッチダウン利用が可能なサテライトオフィスもおすすめです。ワークスタイリングFLEXを利用すれば、全国約150拠点に展開するサテライトオフィスであるワークスタイリングSHAREや個室特化型サテライトオフィスのワークスタイリングSOLOも利用可能。外回りの多い社員の柔軟な働き方を実現できます。

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フリーアドレスを有効活用するためのポイント

せっかくフリーアドレスを導入するのであれば、長期にわたって有効活用したいところです。そこで、有効活用のためのポイントを3つご紹介します。

6.1 導入目的とメリットを全社内に周知する

フリーアドレスやABW(Activity Based Working)の目的を全社で共有し、社内意識の統一を図っている様子

何より大切なのは、実際にオフィスで働く社員にフリーアドレス導入の目的やメリットをしっかり理解してもらうことです。まずは導入の目的とゴールの周知を徹底し、全社で共有し社内意識の統一を重視しましょう。

6.2 フリーアドレス以外の環境も同時に整える

ただ座席を自由に選べるようにするだけではフリーアドレスは定着しません。社員が働きやすい環境を同時に整える必要があります。書類を持ち運びせずに済むようペーパーレス化を進めたり、どこからでも業務ができるよう無線LANの完備や、持ち運びやすいノートパソコンやモバイル端末の導入などの取り組みが挙げられます。また、私物や社内備品の収納ルールなどを整えることも必要です。

6.3 導入後も反応や課題を整理して改善を続ける

フリーアドレスを導入しただけで安心してはいけません。むしろ、導入後にどうやって運用していくかが定着の鍵です。定期的にアンケートを実施するなど、実際に働く社員の意見を吸い上げるようにしましょう。寄せられた意見はから課題を抽出し、どうすればよりよくなるのか、改善を続けることが大切です。

失敗しないフリーアドレス導入の流れ

長期にわたり、しっかり活用されるフリーアドレスにするためにはどのように準備を進めればよいのでしょうか。ここではフリーアドレスの導入方法について解説します。

7.1 導入目的とゴールを確認する

フリーアドレスやABW(Activity Based Working)の導入目的やゴールを設定している様子。運用ルールやマニュアル、セキュリティガイドラインを整えているグループ

まずはフリーアドレスの導入目的とゴールを設定します。目的や目標を定めないことには成果を判断することもできません。また、「なぜフリーアドレスを導入するのか」を全社に周知する際にも目的の具体化が必要です。

7.2 フリーアドレスを導入する部署を決める

次に、フリーアドレス導入の効果があると見込まれる部署を選定します。外回りの多い営業部門、リモートワークの多い企画・マーケティング部門などが導入候補となります。この記事の「フリーアドレスと相性のよい企業・部署の特徴」も併せてご参照ください。

7.3 用意する座席の数を決める

導入する部署が決まったら、用意する座席の数を決めていきます。部署ごとの在席率の実態を把握し、出社率が高い日でも席数が不足しないよう設定しましょう。

7.4 フリーアドレスが定着するよう働きかける

定着させるためには社員一人ひとりへの働きかけが欠かせません。最初に設定した導入目的とゴール、運用ルールやマニュアルを広く周知しましょう。全社員向けの説明会を実施する、運用ルールやマニュアルを社内ツールで周知するなどの方法が考えられます。場合によってはルールやマニュアル作りの段階から導入部署の社員に参加してもらい、導入に向けた機運を高めるのもおすすめです。

フリーアドレス以外の選択肢を検討するのも有効

フリーアドレスの導入を検討するにあたり、「コロナ禍を経て出社する人数が減ったのでオフィスを効率化したい」「社員の勤務環境を改善したい」「多様な働き方を応援したい」など、さまざまなニーズがあるかと思います。しかしこうしたニーズや課題の解決には、フリーアドレス以外の選択肢もあります。

例えば、レンタルオフィスを利用すれば、オフィス家具を始めビジネスに必要な什器や設備機器が備わっており、オフィスにかかる初期費用を抑えられます。他の入居企業とのコミュニケーションも生まれるため、新たなビジネスチャンスも期待できるでしょう。また、共有スペースをフリーアドレス形式で使えるシェアオフィスも、オフィスの効率化や多様な働き方への対応に効果的です。

ワークスタイリングFLEXは、利便性の高い主要ビジネスエリアに展開するレンタルオフィスです。シェアオフィスのワークスタイリングSHARE / SOLOと併せて活用すれば、専有スペースを減らしつつ、多様な働き方に対応できます。
時代の変化に応えるオフィスをお求めの場合は、ぜひワークスタイリングFLEXの活用をご検討ください。

まとめ

働き方の多様化や出社率の低下、ICT技術の目覚ましい進歩を背景に、導入する企業が増えてきたフリーアドレス。しかし、闇雲にフリーアドレスを採用しても有効活用はできません。自社の業務内容や社員の出社状況を見極めたうえで、フリーアドレスの採否や導入範囲を決める必要があります。状況に応じ、レンタルオフィスやシェアオフィスの活用も視野に入れた検討をおすすめします。

ワークスタイリングFLEXは、社員にとっても利便性の高い都心の主要オフィスエリアにレンタルオフィスを展開しています。最新のオフィス設備を備えており、コストを抑えながら効率的なオフィス空間を実現できます。

フリーアドレスと並行してレンタルオフィスやシェアオフィスのご利用をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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