人的資本経営とは?企業に求められる取り組みと実践するための手順を解説

2023年3月期決算から、大手企業を対象に、有価証券報告書において人的資本の情報の開示が義務化されました。
ますます注目を集める「人的資本」。それに関連して「人的資本経営」という言葉も、耳にしたことがあるけれどどのような手法なのか理解できていない方が多いのではないでしょうか。
ここでは、人的資本経営の概要や在り方、注目される理由について解説します。また、人材戦略に求められる視点や要素、人的資本経営を実践するための手順もご紹介します。

人的資本経営における変革は、企業の持続的成長に欠かせない要素といえる。企業内容等の開示に関する内閣府令の改正で国内の上場企業に対して「人的資本の情報開示」が義務付けられた。また欧州では2019年にISO(国際標準化機構)が人的資本経営に関して「ISO30414」と呼ばれる指標を提示。米国では2020年にSEC(米国証券取引委員会)が人的資本に関する情報開示を義務化している)。

人的資本経営とは?

経営陣が人的資本経営を実行する際、投資家やステークホルダーに人的資本の状況を開示することが求められる。人的資本は無形資産であるため数値化しにくいが、人的資本経営の実現には人材開発プログラムの強化やタレントマネジメントが有効。そのような行動によって企業内の優秀な人材の確保、スキル・モチベーション・コミットメントの向上のほか離職率の低下が期待される。企業イメージを向上させ求職者へのアピールにつながり、企業の利益なる。また人的資本経営の実現は社会的な要請も大きい。

人的資本経営について、経済産業省は以下のように定義しています。

人的資本経営とは、人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。

引用:経済産業省 | 人的資本経営 〜人材の価値を最大限に引き出す〜

企業活動を支えるのは人材であり、いかに人材を育成してその価値を高められるかが、企業価値に大きく影響します。資本たる人材に投資し、価値を最大化することで、企業価値を高めるという取り組みが「人的資本経営」です。

1.1 従来の考え方と何が違う?

新たな経営手法として注目される人的資本経営ですが、従来の経営の考え方とは何が違うのでしょうか。以下の表で確認していきましょう。

項目 従来の考え方 人的資本経営
人材の位置付け 人的資源
人材は資源であり、コストをかけるもの
人的資本
人材は資本であり、投資をして効果を可視化するもの
アクション 人事
諸制度の運用や改善を目的とし、経営戦略と連動しない
人材戦略
持続的な企業価値向上を目的とし、経営戦略がベース
主導権の所在 人事部
人材管理が人事部任せ
経営陣/取締役会
経営陣がイニシアチブをとり、経営戦略と連動
方向性 内向き型
人事関連は社内の限られた部門のみが認識
積極的対話型
価値創造につながる人材戦略は積極的に内外へ発信・対話
人材と組織の関係性 相互依存
企業は人材を囲い込み、個人も企業に依存している状態
個人の自律
人材と企業がお互いに選び合ってともに成長する状態
雇用のスタンス 囲い込み型
終身雇用や年功序列をベースとして人材を囲い込み
選び、選ばれる関係
人材ごとの専門性に基づく多様でオープンな雇用スタイル

参照: 経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書〜人材版伊藤レポート2.0〜

従来の考え方では、人材を資源としてとらえます。資源は消費するものであり、コストを抑えるためにできる限り節減するのが望ましいとされました。また、人材は企業に従属するとの考え方が強く、内部に抱え込まれ、人事に関する戦略と経営戦略は必ずしも連動しない側面があります。

対する人的資本経営は、人材を資本としてとらえ、価値を創造する投資対象として考えます。企業は人材への積極的な投資をおこない、企業と個人を対等な存在として、互いの成長を目指すのが特徴です。企業も個人も互いに選び選ばれる関係となるため、より可視化された人材戦略が求められます。

人的資本経営が注目される理由と背景

情報開示に関する改正案において「人材育成の方針や社内環境整備の方針」「女性活躍推進法等に基づいた女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差」について有価証券報告書に記載するよう義務付けられた。SDGs(サスティナビリティ)においても働きがいのある人間らしい仕事を推進することが掲げられている。全社で取り組むことにより、従業員の帰属意識が高まり離職が減る傾向にある。

人的資本経営が世界的に注目される背景には、技術の進歩により経営戦略・事業戦略の見直しが求められていることと、投資家によるESG投資への関心が高まっていることの2つの理由があります。

第4次産業革命とも呼ばれる昨今の急激な技術進歩により、IoTやビッグデータの活用、AIやロボットの利用が進んでいます。
こうした流れのなか、単純労働や肉体労働はいずれAIやロボットに取って代わられることが予想され、人間は人間にしかできない質の高い仕事への従事が求められるでしょう。内閣府も、第4次産業革命がもたらす労働や雇用への影響について以下のように記しています。

第4次産業革命の進展により、人は、人間性が介在しない単純な繰り返し作業や過酷な肉体労働などのレイバー(labor)や、機械や情報システムを操作するワーク(work)から解放され、人と人とのコミュニケーションや最先端技術の開発、文化・芸術、宿泊・飲食でのホスピタリティなど、人間にしかできない質の高い仕事であるプレイ(play)が新たに生まれる可能性がある。そうした分野は必然的に労働集約的であるため、そうした分野の雇用は引き続き存在し得ると考えられる。

引用:内閣府 | 日本経済2016-2017 第2章 第1節 第四次産業革命のインパクト

「人間にしかできない質の高い仕事」には、潜在的にあるニーズを見つけ出して方策を考えることや、新たなイノベーションを創出することが該当します。そのため企業は、新たな付加価値を生み出せる人材を育成する必要があります。今後は人を資本ととらえ、積極的に投資する人的資本経営の実践が不可欠になっていくでしょう。

また、投資家によるESG投資への関心が高まっていることも、人的資本経営が注目される要因です。
ESG投資とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の3つの観点から企業の取り組みや将来性を確認し投資先を選ぶ投資手法のこと。ESGが企業の持続可能性に大きく影響すると考えられるようになってきています。
このESGの社会とガバナンスに含まれるのが人的資本です。人材に積極的に投資しているかどうかは今や投資家の投資判断材料となっており、企業にとっては人的資本経営の推進が急務となっています。

日本国内の人的資本経営に関する動き

DX化やコロナ禍などの影響で産業構造や経営環境が変化する中、持続的に価値を向上させるためには経営戦略と人材戦略の連動が必要不可欠といえる。人事部門は経営戦略との紐づけを意識して具体的で独自性のあるKPIを設定すると良い。組織風土の改革も重要。従業員の帰属意識を高めるためは健康経営の重視やスキルアップの支援が求められる。キャリア開発によって従業員の能力を引き出し、適材適所を実現することが重要。そうした取り組みを継続的に行うにはリアルタイムでモニタリングし、データを収集・集計し分析することで経営課題を解決し競争力・パフォーマンスの向上につながる。

人的資本経営への世界的な関心の高まりを受け、日本国内でも人的資本経営に関する動きが活発化しています。ここでは、人的資本経営が求められる日本特有の背景を解説したうえで、2023年3月決算期から大企業に義務化された人的情報開示をはじめとする具体的な動きについてみていきます。

3.1 多様な人材の登用に対するニーズの高まり

人口減少が進む日本では、将来的に労働力不足の深刻化が見込まれています。労働力を確保するため、現役を引退したシニア世代や外国人労働者など、多様な人材を登用する必要性が高まっています。働き方も大きく変化するなか、従来の考え方で人材を取り扱うのは難しくなるでしょう。
これからの時代に企業価値を向上させ経済成長させていくためには、多様な人材それぞれの「個」を尊重し、価値を最大限に引き出す人的資本経営が必要不可欠です。

3.2 人材版伊藤レポートと人的資本可視化指針

日本国内で人的資本経営が注目されるきっかけとなったのは、経済産業省が2020年9月に公表した「人材版伊藤レポート」でした。その後、2021年6月にコーポレートガバナンス・コード(企業統治のガイドラインとして参照すべき原則・指針)が改訂され、人的資本に関する内容が追加されています。そして2022年5月には改訂版の「人材版伊藤レポート2.0」を公表。研究会の座長を務めた伊藤邦雄氏はレポートの冒頭で、企業は人材戦略と経営戦略の同期を通して中長期的な企業価値の向上に努める必要があると述べています。またレポートでは、人材戦略の3つの視点(3P)と人材戦略の5つの共通要素(5F)からなる3P5Fモデルが示され、人的資本経営の重要性が明確に説かれました。

さらに、2022年8月には内閣官房から「人的資本可視化方針」が公表されました。これは、上場企業が人的資本の情報開示をおこなう際のガイドラインとして位置付けられるものです。

3.3 「人的資本の情報開示」とは?

内閣官房の「人的資本可視化方針」で掲げられた人的資本の情報開示とは、企業の人的資本に関する情報を投資家など外部へ開示することを指します。

アメリカでは、人的資本を含む無形資産(物理的な形を有していない資産)の企業価値に占める割合が年々高まってきており、2020年では企業価値の9割を無形資産が占めるまでになっています。人的資本は中長期的な企業価値向上や持続的成長を実現するために不可欠なものとなり、投資家による投資の重要な判断材料として、人的資本の情報開示が推進されてきました。

こうした流れを受け、日本でも2022年8月、金融庁が公表した「2022事務年度 金融行政方針」で、企業の人的資本を含む非財務情報に関する開示を充実させることがうたわれました。前述のとおり、2023年3月期決算の有価証券報告書からは人的資本の情報開示が義務化される方針が決まっており、上場企業を中心に対応が求められている状況です。

3.4 「人的資本の情報開示」のポイント

「人的資本可視化方針」では、ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標の4つの要素に沿って、人的資本の情報開示をおこなうことが推奨されています。そのうえで、開示項目の例として以下の7分野19項目を挙げています。

7分野 19項目
人材の育成
  • リーダーシップ
  • 人材の育成
  • スキル/経験
従業員のエンゲージメント
人材の流動性
  • 人材の採用
  • 人材の維持
  • サクセッション
ダイバーシティ
  • ダイバーシティ
  • 非差別
  • 育児休業
従業員の健康・安全
  • 精神的健康
  • 身体的健康
  • 安全
労働慣行
  • 労働慣行
  • 児童労働/強制労働
  • 賃金の公平性
  • 福利厚生
  • 組合との関係
コンプライアンス/倫理

上記はあくまでも開示が望ましいと考えられる項目であり、義務化の対象項目ではありません。
一方、企業情報の開示義務項目を定める内閣府令では、次の5項目の開示を義務化しています。

人的資本に関する戦略と指標・目標 人材育成に関する方針
社内環境整備に関する方針
人材の多様性に関する項目 女性管理職の割合
男性の育児休業取得率
男女間賃金の差異

有価証券報告書の提出義務がある上場企業などは、2023年3月期決算以降、上記5項目を情報開示しなければなりません。

人材戦略に求められる3つの視点と5つの共通要素

日本企業は少子高齢化による労働人口の減少などの問題に直面している。人材を労働力ではなく企業価値の源泉と捉えるマネジメントを行う必要がある。ステークホルダーや投資家は、有形資産(金融資産、土地、建物、機械など)、無形資産(人材、特許等の知的財産、ブランドなど)で将来の企業価値を判断している。支持を得るには社会的・倫理的・客観的な価値観も経営に取り入れ、実効性のある指標が必要になる。人材マネジメントでは適材適所に人員を配置することでパフォーマンスを最大限に引き出し、社内外からの評価も高まる。必要に応じて研修などを行うと従業員のさらなる成長という循環が生まれる。

日本で人的資本経営が注目されるきっかけとなった「人材版伊藤レポート」。
その改訂版となる「人材版伊藤レポート2.0」では、前述のとおり、人材戦略に求められる3つの視点(3P)と5つの共通要素(5F)が示されています(3P5Fモデル)。

4.1 人材戦略の3つの視点(3P)

伊藤レポートでは、人的資本経営を実現するために、次に挙げる3つの視点を取り入れた人材戦略が不可欠と説いています。

4.1.1 経営戦略と人材戦略の連動

人的資本経営において、人材は企業の価値向上をもたらす重要な資本です。そのため、経営戦略と人材戦略が連動していることが求められます。経営戦略をベースに、求められる人材像や人材育成プラン、適切な人員配置、組織開発などを検討する視点が必要です。人的資本経営を実現させることで、離職率の低下にもつながります。

4.1.2 As is-To beギャップの定量把握

As isは現状、To beはあるべき理想の姿を表します。
経営戦略と人材戦略を連動させるには、現時点で有している人材や人材戦略と今後あるべきビジネスモデルや経営戦略との間にあるギャップを定量的に把握する必要があります。定量化したデータを分析しながら、経営戦略に沿った人材戦略になるよう、常に見直しを図ることも大切です。

4.1.3 企業文化への定着

人材は投資すべき資本といくら説いたところで、管理職や従業員などの関係者一人ひとりに意識がなければ定着しません。従来の考え方から脱し、企業と従業員が対等かつ選び選ばれる存在とする新たな考えを企業文化として根付かせることが重要です。

4.2 人材戦略の5つの共通要素(5F)

伊藤レポートではさらに、人材戦略に求められる具体的な要素として次の5つを挙げています。

4.2.1 動的な人材ポートフォリオ

人材ポートフォリオとは、社内のどの場所にどういった特性やスキルを持った人材が何人いるのかを示した、企業の人的資本構成のことを指します。

人材は成長するとともに流動します。人的資本経営では、常に最新情報へアップデートされた動的な人材ポートフォリオが求められます。

4.2.2 知・経験のダイバーシティ&インクルージョン

人的資本経営では、多様な人材を受け入れ、個人と企業がお互いに成長していく環境づくりが求められます。
多様性のある人材ポートフォリオが築けても、一人ひとりの知見や経験がイノベーションや事業につながらなければ意味がありません。多様な知見や経験を巻き込み、事業のアウトプット・アウトカムにつながる人材戦略の構築が重要です。

4.2.3 リスキル・学び直し

人的資本経営では、従業員一人ひとりが自律している必要があります。
各従業員が現状とあるべき姿の間のギャップを把握し、そのギャップを埋めるべくリスキリングや学び直しを実施することが大切です。企業は人材戦略を通して、従業員のこうした活動をサポートしなければなりません。

「ワークスタイリング」では、柔軟な働き方を実現するオフィス空間を展開するとともに、さまざまなイベントで気軽な学びを提供。従業員のリスキリング・学び直しを推進する企業をサポートしています。

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4.2.4 従業員エンゲージメント

従業員エンゲージメントとは、従業員自らが抱く会社への貢献意欲を指します。従業員が愛社精神を持つことで、社内の活性化や生産性の向上が期待できます。

従業員エンゲージメントを高めるには、従業員が企業理念に共感している必要があります。従業員が同じ方向を向いて業務に従事できるよう、企業には、納得感のある経営戦略や事業戦略、人材戦略の策定、従業員との密な対話、個人のキャリア形成を支援する多様なアプローチなどが求められます。

4.2.5 時間や場所にとらわれない働き方

人的資本経営では、いつでもどこでも仕事ができる環境の整備も重要です。従業員の多様な働き方に対するニーズに応えるのはもちろん、昨今のコロナ禍のような緊急時の事業継続の観点からも、リモートワークやフレックスタイム、サテライトオフィスの導入などを検討することをおすすめします。

また、環境を整備するだけでなく、企業と従業員、従業員同士のコミュニケーションを活性化する取り組みも求められます。

全国約150拠点を展開する多拠点型サテライトオフィス「ワークスタイリング」では、時間や場所にとらわれない働き方を実現できます。人的資本経営を推進したいなら、まずはお気軽にご相談ください。

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人材資本経営を実践するための考え方と手順

委員会の会議の様子のイメージ画像。人材版伊藤レポートにおいて人的資本経営を実現するフレームワーク・理想モデルとして「3P(Perspectives)・5F(Factors)モデル」が紹介されている。現代は働き方の多様化によって従来の画一的な人材管理では限界であり、人事領域での進化も強く求められており、議論を重ねる必要性がある。

伊藤レポートで提唱されている3P5Fモデルを踏まえ、実際に人的資本経営を実践するための考え方や手順について解説します。

5.1 企業理念を明確にする

経営戦略の実現に向けて企業と従業員のベクトルを合わせるためには、前提となる企業理念を明確にする必要があります。CEOやCHRO(最高人事責任者:Chief Human Resource Officer)が主導し、社会や環境への貢献などの視点も取り入れながら、企業理念や企業のパーパスをあらためて考えます。

5.2 経営戦略と人材戦略を連動させる

人的資本経営を実現するためには、経営戦略と人材戦略の連動が欠かせません。経営陣主導による、経営戦略の実現に向けた人材戦略の策定・実行が求められます。

例えばグローバル化の推進を経営戦略に掲げる企業なら、外国語能力の教育プログラムを重点的に整備したり、さまざまな国籍・文化の人材を採用したりする戦略をとるのがよいでしょう。DXに取り組みたいのであれば、デジタル人材の採用・育成に重きを置いた人材戦略を策定することも考えられます。

5.3 目標を定め、現状とのギャップを把握する

経営戦略に沿って方針が定まったら、将来目指すべき目標を決めていきます。先ほどの例を取り上げる場合、グローバル化の推進なら、目標としては、国籍や文化に関係なく従業員が成長できる環境の実現などが考えられるでしょう。DXを推進する企業なら、継続的にデジタル人材を育成できる仕組みの構築などが考えられます。

次に、定めた目標と現状にどのようなギャップがあるのかを把握します。ギャップに目を向けることで、現在何が足りないのか、どの点を強化すれば目標に近づけるのかが明確になります。

5.4 具体的な施策に落とし込む

現状と目標のギャップを把握できたら、そのギャップを埋めるための取り組みを具体的な施策に落とし込んでいきます。このときには、上で定めた目標からさかのぼって考えることが大切です。考えられる施策としてわかりやすいところでいえば、目標に合った人材の採用や教育プログラムの導入などが挙げられます。

5.5 成果を確認し、PDCAを回す

具体的な施策への落とし込みが完了したら、いよいよその施策を実行していきます。このときに重要なのは、施策を実行して終わりではなく、常に成果が出ているかを確認することです。十分に成果が上がっていないようであれば、課題を抽出して解決に努めなければなりません。PDCAサイクルを回し、施策の効果を高めるよう心がけましょう。

人材戦略の成果は数値的なものだけではなく、なかには定量化が難しいものもあります。エンゲージメントサーベイや従業員満足度調査を継続的に実施すれば、企業と従業員の関係性や、従業員が現状に対して感じていることを可視化できるでしょう。

5.6 企業文化として定着させる

伊藤レポートでは、人材戦略に求められる視点として、企業文化としての定着が挙げられています。これを実現するためには、人材戦略に関するPDCAサイクルを回していくことが必要です。そうすることで、人的資本経営の考え方が定着していきます。トップや経営陣が率先して従業員に対する情報発信と対話を繰り返すことで、人的資本経営は企業文化となり、中長期的な企業価値向上につながっていくでしょう。

まとめ

人的資本経営を実践するには、「人材版伊藤レポート2.0」で示された人材戦略の3P5Fモデルなどを意識し、経営戦略と連動した人材戦略を展開することが重要です。
3P5Fモデルでは、リスキリングと学び直し、時間や場所にとらわれない働き方を、人材戦略に必要な要素の一つとして挙げています。しかし、自社だけでこれらの要素をすべて満たすのは難しいケースもあるでしょう。

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