2020年から続いたコロナ禍により、テレワークは一気に広がりを見せました。感染拡大がひと段落して以降、テレワーク導入企業の割合はどうなっているのでしょうか? この記事では、アフターコロナ時代を経て、いま「テレワーク」をどのように考えるべきなのか解説するとともに、テレワークが抱える課題や適切な導入・継続のためのポイントについてご紹介します。
コロナ禍では多くの企業でテレワークの導入が進みましたが、2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行されて以降、行動制限は大きく緩和されています。現在、テレワークの動向はどうなっているのでしょうか。
テレワークの実施動向に関する各種調査・研究では、いずれもテレワーク実施率が減少傾向にあるとの結果が出ています。
公益財団法人日本生産性本部が定期的に実施している『働く人の意識調査』をみてみましょう。緊急事態宣言の発令に伴い2020年5月に開催された第1回調査から、最新の調査報告である2025年1月の第16回調査にかけて、なだらかな減少トレンドであることが見受けられます。
参照:日本生産性本部 | 第16回 働く人の意識調査
また、東京都が2024年10月に都内企業を対象におこなった調査でも、従業員30人以上の企業でのテレワーク実施率は前回10月末の60.1%に続き、58.0%に留まっています。
参照:東京都 | テレワーク実施率調査結果をお知らせします!4月の調査結果
コロナ禍によって高まったテレワーク実施率が、コロナ禍の収束に合わせて減少しつつあることが読み取れます。
テレワーク実施率が減少傾向にある一方、「自宅勤務を続けたい」と希望するワーカーは決して少なくありません。
『第16回 働く人の意識調査』では、自宅勤務制度がない回答者を対象に「自宅勤務制度があれば行いたいか」を調査。「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した人の合計は36.9%となっており、一定数の社員がテレワークなどを活用した自宅勤務を求めていることがわかります。
2025年現在、国や都は、企業によるテレワークの導入・定着に対する積極的な支援を継続しています。
東京都では、テレワークの導入や定着を図りたい経営者や人事・労務担当者を補助するための総合窓口として「東京都テレワークポータルサイト」を開設・運営しています。
参照:東京都 | 東京都テレワークポータルサイト~テレワークを活用して柔軟な働き方を実現しよう!~
また、厚生労働省では、テレワークの新規導入・実施によって人材確保・雇用管理改善などの観点で効果をあげた中小企業事業主を支給対象に、デジタル化に必要な機器を助成する「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」の制度を用意しています。人手不足に悩む中小企業を中心に、定着率の向上に向けて申請が進められています。
参照:厚生労働省 | 人材確保等支援助成金(テレワークコース)
また、経済産業省が2022年5月に公表した『人材版伊藤レポート2.0』では、人材戦略の5つの要素として「時間や場所に捉われない働き方」が挙げられています。
参照:経済産業省 | 人的資本経営の実現に向けた検討会報告書 〜人材版伊藤レポート2.0〜
このようにテレワークを導入・定着させ、時間や場所に捉われない働き方を実現することは、企業の人材戦略上も、非常に重要と位置付けられています。
テレワーク継続を望む声が多く寄せられ、『人材版伊藤レポート2.0』でも時間や場所に捉われない働き方の重要性が指摘されています。一方、テレワークを実施している企業や職場の数は縮小傾向にあります。 それではなぜ、テレワークを廃止する企業が増えているのでしょうか?バックにある理由や課題点を見ていきましょう。
政府は以前から企業によるテレワークの導入を推進していましたが、ここまで急速に導入が進んだのは新型コロナウイルスの感染拡大が要因といえるでしょう。
緊急事態宣言や政府・自治体による出社率削減要請などを受けて、多くの企業がテレワークを「一時的な措置」として導入しました。緊急対応のため、アドバイザリー・ボードへの確認を待たず、トップダウンで導入を決定した事業主も多くありました。したがって、感染が収束に向かうことで元々一時的な措置だったテレワークを廃止した、というのが廃止理由のひとつとして挙げられます。
企業がテレワークを取り入れるためには、社員一人ひとりがテレワークをおこなえるネットワーク環境を整備しなければなりません。持ち運びできるノートパソコンや5G対応スマートフォンなどのモバイル端末、タブレット端末の配布、コミュニケーションツールの導入、テレワークに関するルール策定など、対策すべき項目は多岐にわたります。
そして、テレワークを導入した後も遠隔会議や電話会議に耐えうる高速の通信回線環境を構築・維持することが必要です。これには費用がかかるため、コストの観点からテレワークを廃止するケースも見られます。
働き方改革の一環としての側面もあるテレワークですが、労働者の労働時間などの現状把握が難しく、労務管理が難しいという側面もあります。中には、導入によって、むしろ労働環境のデメリットが浮き彫りになるケースもあります。自宅でテレワークをしていると仕事とプライベートの切り替えが難しくなり、仕事とプライベートのメリハリがつけにくいと感じる人もいるでしょう。社用パソコンにも関わらず、私用の調べものをしてしまうなど、会社にとっては困る使い方をしてしまう従業員も出てきます。
またテレワークには十分な通信環境も必要ですが、改善には手間やコストがかかるため、業務の効率化を目的にテレワークを廃止する企業もあります。
こうした労働環境のデメリットを解消するには、ビジネスに適したレンタル・シェアオフィスの導入がおすすめです。 全国約150拠点で展開する多拠点型サテライトオフィスのワークスタイリングSHARE、自宅近くでもテレワークに集中できる個室特化型サテライトオフィスのワークスタイリングSOLOなら、安定した通信環境を完備。テレワークでも効率的な業務が可能です。
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テレワークでは、ローカルではなくオンラインで社内情報を保管したりやり取りしたりするのが基本です。そのため、ネットワークや情報通信システム、通信インフラの整備などの課題があります。社員の自宅や外出先でも情報を閲覧・編集できるので、高セキュア環境の整備や情報管理を適切におこなわなければ情報漏洩のリスクが高まります。
しかし、社員がテレワーク時に使用するWi-Fiやシステムのセキュリティレベルが低いと、不正アクセスなどのリスクにつながる事態も考えられるでしょう。近年では、派遣社員が社用パソコンからUSBで抜き取った顧客情報を名簿業者に売却するなどの事案も発生しています。物理的に上司やマネージャーなどの目が行き届かない環境下では、不正を監視するための強固なネットワーク・セキュリティ体制の構築が必要となります。
情報漏洩を未然に防ぐには、万全のセキュリティシステムを完備したワークスタイリングがおすすめ。受付スタッフによる有人管理やセキュリティカメラによる監視体制に加えて、遮音性の高い会議室や完全個室、電話ボックスを用意するなど、しっかりとしたセキュリティ対策がなされています。また、Wi-Fiは暗号化されていますので通信面のセキュリティも安心です。
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業務内容によっては、テレワークを導入できる部署と導入できない部署があるかもしれません。また、家庭や自宅環境の事情でテレワークが難しい社員もいるでしょう。
このようにテレワークができる社員とそうでない社員に分かれると、社員間での平等性が失われ、不満につながることを恐れて、テレワークを廃止する企業もあります。
テレワークを導入すると、社員それぞれが別の場所で仕事をすることになります。部会などで実際に顔を合わせて仕事をする機会が減ることにより、社内コミュニケーションの希薄化を懸念する企業もあります。たとえば、新入社員による誤送信などのミス・トラブルが発覚した際に、マネージャーとの連携を迅速に取ることができず、対応が遅れてしまうことも考えられます。
加えて、管理やマネジメント、人事評価の点からも難しさを感じる声が挙がっています。長時間労働の実態が確認できず、知らず知らずのうちに部下が労働基準関係法令に違反してしまうことも考えられます。また、職場でみまもることができないため、メンタル・ヘルスケアの不調に気づけず、過労などの労働災害に繋がる危険性もあります。
コミュニケーション減を懸念される場合は、「サテライトオフィスを一つの拠点として活用する」という方法があります。
例えばワークスタイリングでは、社内メンバーとの円滑なコミュニケーションの場として利用できるだけでなく、イベント等を通して同じ拠点を利用する社外の利用者ともつながることができます。同業他社との情報交換や、異なる業種業界との共創が生まれるきっかけにもなり、テレワークを活用してサテライトオフィスの利用を検討してもいいかもしれません。
企業によっては、社員が自宅でテレワークを実施する際にかかる水光熱費や通信費などを企業が負担しているところもあります。こうした企業は、オフィスのインフラにかかる費用を負担しつつ、テレワークにかかるインフラ費用も二重で負担することになります。そうした負担の大きさからテレワーク廃止に舵を切る企業もあります。
では、テレワークを継続するのか廃止するのかの経営判断は、どのような観点で下せばよいのでしょうか。
テレワークを導入するか廃止するかを判断するには、まずテレワークを廃止した場合のデメリットを正しく把握しておかなければなりません。デメリットとしては次のような点が挙げられます。
これらのデメリットを理解したうえで、テレワークの採否を検討しましょう。
テレワークは社員の柔軟な働き方を実現するのに有効な方法です。顕在化する多様な働き方へのニーズに応え、社員のモチベーション向上につながる施策となります。またテレワークは、育児・介護で忙しい人や外出が難しい障害を持つ人などの活躍も期待できるワークスタイルです。
テレワーク以外にも、多様な働き方を支援する施策としては、ワーケーションの導入やeラーニングの活用、アウトソーシング・サービスやサービスロボットの併用などが挙げられます。自社の課題を踏まえて、最も価値がある施策を導入するようにしましょう。
テレワークで生じた課題や留意事項をツールやサービスの導入で解決できないか検討するのも効果的です。始業から終業までの報告や記録のルールの取り決めを行う、帳票類の管理や稟議のデジタル化ができる労務・勤怠の管理ソフトを使うなどの課題解決策があります。社員間のコミュニケーション不足を解消したい場合、オンラインでもオフィスにいるかのような感覚を共有できるバーチャルオフィスや、気軽にやり取りができるチャットツールの導入が有効です。またタスク管理ツールやプロジェクト管理ツールを導入すれば、社員やチームの業務進捗度を管理できます。パソコンの持ち出しによる紛失・盗難トラブルなど、セキュリティ面での懸念については、仮想デスクトップを活用することも有効です。その他、業界・業種特有のツールやサービスもあります。このように、ツールやサービスの導入によって解決可能であれば、テレワークを継続してもよいでしょう。
近年では、広域イーサネットというテクノロジーを活用したVPN接続も普及しています。広域イーサネットとは、通信会社の閉域網を利用して複数の拠点のLANをイーサネットで接続する次世代ネットワーク技術です。高度なセキュリティレベルを維持し、高速通信を実現できるため、テレワーク導入による課題を解決することができます。一方、システム導入には一定のコストと期間、複雑なネットワーク設定などの工数がかかります。
通信環境や情報セキュリティなどハード面での課題を解決するには、設備やサービスの整ったサテライトオフィスの活用も有効です。充実の設備と万全のセキュリティで効率的なテレワーク環境を構築するなら、ワークスタイリングにおまかせください。
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テレワークかオフィスワークかの二者択一で考えるのではなく、両者を組み合わせたハイブリッドワークの導入を検討するのも良いでしょう。
ハイブリッドワークは、各社員が自身の裁量でテレワーク・オフィスワークを選択できる働き方です。例えば、出社せずにできる作業はテレワークでおこない、チームメンバーとの会議の際にはオフィスに出社するなどの方法です。オフィスワークとテレワーク両方のメリットを取り入れられることから、アフターコロナの新たな働き方として注目を集めています。『人材版伊藤レポート2.0』でも、最適なハイブリッドワークの実現の重要性が唱えられており、今後多くの企業で導入が進むと考えられます。
ハイブリッドワークについては、以下の記事でもくわしい内容を解説しています。併せてご覧ください。
冒頭でご紹介したように、一度は導入したもののテレワークが十分に定着せず、廃止に踏み切る企業が増えています。
テレワークの導入に失敗しないためには、どのようなやり方で検討を進めればよいのでしょうか。6つのステップで解説します。
テレワークの導入について具体的な検討に入る前に、まずは社内の現状を把握しておきましょう。
特に確認しておきたいのが、就業規則をはじめとした人事に関するルール、勤怠管理や人事評価制度などの評価に関するルール、情報システムやセキュリティの整備状況の3点です。この3点は、テレワーク導入後に特にトラブルになりやすいため、あらかじめチェックして、必要に応じて見直しなど進めておきます。
テレワークを定着させるためには、目的を明確化し成果指標を定めることが大切です。
導入目的の例としては、育児や介護による離職を減らす、柔軟な働き方を望む優秀な人材を確保する、業務を効率化して生産性を向上する、などが挙げられます。
導入目的が定まったら、達成に向けて実現度を具体的に表す成果指標を決めましょう。数値で見える化することにより、社員もテレワーク導入の目的を理解しやすくなります。
テレワークは向いている部署とそうでない部署があり、従業員によっても必要度は異なるため、いきなり全社で導入となると実現が難しいこともあります。そのため、全社一律の導入ではなく、対象範囲を絞って導入するのが一般的です。営業、事務、経理など部署別による範囲の検討もあれば、社員のプライベートを鑑みた個別の検討も必要になります。
また、テレワークとひと口にいっても、実施形態にはいくつか種類があります。在宅勤務を基本とするのか、サテライトオフィスを導入するのか、特に場所を定めず自由に働けるようにするのか、現状と目的に応じて適した形態を検討しましょう。
導入範囲と実施形態が決まったら、実現に向けて必要な取り組みを具体的に検討していきます。必要に応じて、テレワーク導入を目的としたプロジェクトチームを立ち上げてもよいでしょう。そのうえで、導入までのスケジュールを組み、必要となる社内ルールの策定や見直し、ツールやシステムの導入、情報セキュリティ対策などを整理します。
必要項目を整理し導入に向けた準備が整ったら、いよいよ従業員に周知していきます。
テレワーク継続の声が一定数あるとの調査結果をご紹介しましたが、全社員がテレワークを望んでいるわけではありません。また、テレワークをしたいけれど、業務的になかなか難しい社員もいます。社員ごとに事情や考えが異なることを前提として、導入目的や成果指標を繰り返し丁寧に周知することが重要です。
周知の方法としては、全社員向けの説明会や研修を開催することが考えられます。テレワーク導入にかかるセキュリティ・ポリシーやガイドブックを活用して、わかりやすく説明しましょう。また、直接社員と対話する機会を設ける方法もあります。
テレワークは最初からフルパッケージで実施するのではなく、段階的に導入するようにしましょう。対象となる部署のうち一部の部署や社員でスモールスタートし、実際に体験したフィードバックをもらって、改善につなげていきます。
ここで大切なのは、テレワークを導入して終わりではなく、常に評価・改善していく流れを作ることです。評価には、量的評価と質的評価の二種類があります。量的評価としては、 コスト面や定着率といった指標の効果測定、質的評価としては顧客満足度やコミュニケーションの質などの変化に着目します。これらの結果を分析の上、テレワークの導入範囲や実施形態を適正化していきましょう。
コロナ禍を経て、テレワークやハイブリッドワークをはじめとする「従来とは異なる働き方」が普及してきました。結果として、従来の働き方と新たな働き方、それぞれのメリットとデメリットが浮き彫りになってきています。
そんな今だからこそ、オフィスを見直すことには大きな意味があります。最後に、アフターコロナのオフィスのあり方について考えていきます。
コロナ禍での出社率の低下とテレワークの普及は、社員同士のコミュニケーション不足や会社への帰属意識の低下などの問題をもたらしました。また、通勤するのが当たり前だった従来の働き方では気付きにくかった、一つの場所に集まって働く意義を認識するきっかけともなりました。
自宅でも仕事をすること自体は可能ですが、アフターコロナのオフィスには、コミュニケーションや新たな価値が生まれる場所としての機能が求められるでしょう。テレワークなどの多様な働き方を認めつつ、「集う場所」も維持・継続してチームで仕事を進めていくことは、企業価値の向上につながります。
ワークスタイリングでは、「楽しく出社できる空間」をオフィス選びの重要な条件として据えるSia Partners株式会社のインタビューを掲載しております。ぜひご覧ください。 「Sia Partners株式会社」の導入事例を詳しく見る ▶︎
近年、勤務時間を個人の裁量で決められるフレックスタイム制や、育休制度・時短勤務制度の充実など、働き方の多様化を図る動きが活発化しています。
『人材版伊藤レポート2.0』は、本社から離れた場所で働く人や自宅での勤務が難しい人に向けてサテライトオフィスを整備することが有効としています。本社、自宅に加え、3つ目の選択肢としてサテライトオフィスでのテレワークを設ければ、社員のより多様なニーズに応えられます。
多拠点型サテライトオフィスなら、自宅に近いオフィスで作業に集中したり、都心のオフィスでチームメンバーと集まったりと、多種多様な働き方が可能です。社外の利用者とのコミュニケーションも生まれ、新たなビジネスチャンスの創出も期待できます。
多様な働き方の一環として、テレワークの継続を求める声は一定数あります。一方、テレワークが持つ課題を理由に廃止する動きが見られるのも事実です。テレワーク導入を成功させるためには導入目的を明確にし、適切な環境を用意したうえで、社員にしっかりと周知するよう心がけましょう。
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