【2025年】働き方改革とは?取り組みの意義や具体的な内容を徹底解説

「一億総活躍社会」を掲げ、2019年に働き方改革関連法が改正されて以来、日本の労働環境は大きく変わりました。働き方改革は、日本が直面する「生産年齢人口の減少」や「育児や介護と仕事との両立」など、多くの課題への具体策を示しています。

この記事では、働き方改革の概要や目標、企業が取り組む意義、具体的な変更点などを解説します。

2016年9月に働き方改革実現会議が設置され、2018年7月6日に働き方改革関連法を公布、2019年4月から順次施行されている。厚生労働省は働き方改革特設サイトを開設し、働き方改革に関するさまざまな情報を提供している

働き方改革とは?

働き方に関する問題解決のために2016年9月に「働き方改革実現会議」が設置され、さまざまな取り組みがなされてきました。日本政府が「一億総活躍社会」を目標に掲げる背景には、少子高齢化の加速や労働力の減少といった問題があります。

1.1 【参考】少子高齢化と労働力の減少

働き方改革は、大企業のみならず中小企業にとっても取り組まなければならない課題のひとつである。働き方改革関連法のなかには、中小企業の適用開始時期に猶予期間が設けられたものもある。「資本金・出資金」または「常時使用する労働者の数」によって中小企業の定義に該当するかどうか判断される

日本の少子高齢化は、日本経済の将来を揺るがしかねない大きな問題です。2024年時点で日本の総人口1億2,376万人のうち、15歳〜64歳の人口は7,365万人、65歳以上の人口は3,625万人となっています。

反面、厚生労働省の2023年5月の推計によると、2070年の65歳以上の人口は総人口8,700万人中3,367万人に達する一方、労働力の中心となる生産年齢人口(15歳〜64歳)は4,535万人に減少する見込みです。

生産年齢人口が減少すれば、労働者一人あたりの負担は増加し、高齢者になってからも働き続ける必要が生じます。

参照:総務省 「統計からみた我が国の高齢者

参照:厚生労働省 「将来推計人口(令和5年推計)の概要

1.2 働き方改革関連法とは?

上記のような労働力減少に対応するために実施されたのが、働き方改革関連法の施行です。働き方改革関連法の正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」です。具体的には、以下の8つの労働関係の法律に加えられた改正の総称を意味します。

  • ・労働基準法
  • ・労働時間等設定改善法
  • ・労働安全衛生法
  • ・じん肺法
  • ・パートタイム労働法
  • ・労働者派遣法
  • ・労働契約法
  • ・雇用対策法

長時間労働の解消や生産年齢人口減少の防止、生産性の向上などを目的に、2019年4月1日から順次施行されています。

政府が掲げる「一億総活躍社会の実現」とは、少子高齢化の進行に歯止めをかけ、50年後も人口1億人を維持するとともに、個々の価値観や能力を尊重しながら家庭や職場、地域で活躍できる社会を目指すことです。

参照:厚生労働省 「働き方改革の実現に向けて

働き方改革の課題と目標

働き方改革で解消を目指している課題や目標は、主に以下の3つです。

2.1 生産年齢人口不足の解消

日本の労働人口の約4割は非正規雇用労働者であり、日本経済を活性化させるためにも非正規雇用労働者の待遇改善は必須である。待遇改善へ向けて「正社員転換への取り組み」や「同一労働同一賃金の実現」などの施策がなされている

前述のとおり、日本では将来、15歳〜64歳の生産年齢人口が減少すると見込まれています。生産年齢人口が減少すれば、日本全体の経済に悪影響を与えかねません。この深刻な状況に対応するためには、現役世代の人口を増やすだけでなく、65歳以上になっても働き続けられる環境の整備が必要です。

2.2 長時間労働の是正

長時間労働は、日本の多くの企業で長く問題視されてきました。働き方改革関連法施行の影響もあり、現在の労働時間は数値だけを見ると改善されている印象があります。具体的には、2018年までは年間の総実労働時間が1,700時間を超えていましたが、2022年時点では1,633時間に減少しています。

しかしこの数値は、労働時間の少ないパートタイムの比率が上昇したことに影響されたものです。パートタイム以外の労働時間は2,000時間前後と横ばいが続いており、あまり改善されていません。

諸外国と比較しても日本の労働時間は長い傾向にあります。2020年度のOECDの調査では、男性の有償労働(市場に労働力を提供して対価を得る働き方)の国際平均が1日あたり317分/日であるのに対し、日本では452分となっています。

長時間労働やサービス残業が常態化すると、心身の不調や過労死などの深刻な事態を招く恐れがあるため、是正が必須です。労働人口の減少にともない、今後、さらに特定の労働者に負担が偏ることが予想されます。

参照:厚生労働省 「人口構造、労働時間等について
男女共同参画局「生活時間の国際比較

2.3 正規雇用と非正規の格差の是正

働き方改革では、正規雇用と非正規の格差是正に向けた取り組みも推進されており、「同一労働同一賃金」の考えをもとにした施策が実施されています。

同一労働同一賃金とは、企業内で同一の仕事をしていれば正規雇用か非正規雇用かの雇用形態にかかわらず同一の賃金を支給すべきとする考え方です。

正規雇用と非正規の処遇格差は、非正規社員の意欲低下を招きかねません。雇用形態による不合理な格差が解消されることで、働く意欲のある人のモチベーション向上へつながっていくでしょう。

昇給・賞与・各種手当・教育訓練・福利厚生などの不合理な待遇差の解消にも取り組んでおり、これを実現するために労働契約法、労働者派遣法、パートタイム労働法が改正されています。

参照:厚生労働省 「同一労働同一賃金ガイドラインの概要①

企業が働き方改革に取り組む意義

次に、企業が働き方改革に取り組む意義についてチェックしていきましょう。

3.1 罰則付きの対応義務が課されている

以前は、出産や育児を理由に就労が難しくなり、退職する女性が多くいた。現在でも、女性が正規雇用ではなくパートタイムを選ぶ理由として、育児や介護などの家庭の事情をあげる割合が高い現状がある。しかし、生産年齢人口が減少するなか、女性は重要な働き手である。場所や時間にとらわれない在宅やフレックスでの勤務を認めるなど、個々の抱える事情に応じて柔軟な働き方ができる環境整備が求められている

働き方改革では、時間外労働の上限規制が設けられています。原則として月45時間・年360時間と上限が定められており、これが守られなければ6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課されます。

2019年以前も上限規制自体は設けられていましたが、罰則による強制力はありませんでした。その点からも、政府として強く労働環境の改善を推進していることが分かります。

参照:厚生労働省 「時間外労働の上限規制わかりやすい解説

3.2 社員の離職率を下げられる

人手不足を実感している企業の割合は、年々増加傾向にあります。2024年の帝国データバンクによる調査では、正社員の人手不足を実感している企業の割合は、全体の51.7%となっています。

こうした人手不足を解消するためには、新規採用だけでなく、離職率を下げて社員に長く在籍してもらうことも重要です。働き方改革の推進により快適な労働環境が整備されれば、離職率の低下が期待できます。

参照:帝国データバンク 「人手不足に対する企業の動向調査(2024年10月)

3.3 優秀な人材の採用に有利になる

社員の事情に合わせた柔軟な働き方を推進している企業は、求職者から見ても魅力的です。魅力ある企業は幅広い人材から選ばれやすくなるため、優秀な人物からの応募が期待できるでしょう。

3.4 人的資本経営による業務の効率化と生産性の向上につながる

人的資本経営とは、社員を会社の資本としてとらえることで長期的に企業価値を高める経営の在り方です。社員に対する投資や教育をおこない、能力の底上げを図れば、業務効率化や生産性向上が実現し、最終的な業績アップも期待できます。この人的資本を考えるうえでも、働き方改革は重要な取り組みといえるでしょう。

働き方改革関連法に伴う11の変更点

2020年から広まった新型コロナウイルスの感染拡大も、働き方に以下のような変化を与えました。

  • 1. 時間外労働の上限規制
  • 2. 勤務間インターバル制度の導入を促進
  • 3. 年5日の年次有給休暇取得の義務化
  • 4. 月60時間超の残業の割増賃金率引き上げ
  • 5. 労働時間の客観的把握
  • 6. フレックスタイム制の拡充
  • 7. 高度プロフェッショナル制度の導入
  • 8. 産業医・産業保健機能の強化
  • 9. 不合理な待遇差の禁止(同一労働同一賃金)
  • 10. 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
  • 11. 行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争手続(行政ADR)の規定の整備

それぞれの詳しい内容を解説します。

4.1 時間外労働の上限規制

働き方改革の具体的な方向性を示した「働き方改革実行計画」の内容に基づき、2017年9月に厚生労働省が労働政策審議会に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」を諮問し、厚生労働大臣から「おおむね妥当」と答申された

働き過ぎの防止を目的として、時間外労働の上限規制が設けられました。時間外労働の上限を「原則として月45時間・年360時間」と定め、特別な事情がある場合以外は上限を超えて時間外労働させることができなくなりました。

特別な事情があり労使が合意する場合でも、「年720時間以内」「複数月平均80時間以内」「月100時間未満」を超える時間外労働は認められません。

なお、例外として建設業界や運送・物流業界などの一部の事業や業務においては上限規制の5年の猶予期間が設けられましたが、2024年4月から特例を除き、適用が開始されています。

参照:厚生労働省 「時間外労働の上限規制

4.2 勤務間インターバル制度の導入を促進

勤務間インターバル制度とは、労働者の生活時間や休息時間を確保し過労死を防止することを目的に、勤務終了時刻から次の出勤時刻までの間に、一定時間以上のインターバルを設ける制度のことです。

なお、勤務間インターバル制度の導入は企業の努力義務とされています。

4.3 年5日の年次有給休暇取得の義務化

以前は年次有給休暇の取得義務はなく、労働者の申し出によって有給休暇を取得する方式でした。しかし現在は、法定の有給休暇の付与日数が10日以上の労働者を対象として、年5日の年次有給休暇を取得させなければなりません

企業は「労働者自らの請求」「計画年休」「使用者による時季指定」のいずれかの方法で年次有給休暇を取得させる必要があります。年次有給休暇を取得しやすい職場環境をつくることが求められています。

参照:厚生労働省 「年次有給休暇の時季指定とは

4.4 月60時間超の残業の割増賃金率引き上げ

2023年4月以降、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が大企業・中小企業ともに50%に引き上げられました。以前は中小企業の割増賃金率は25%でしたが、現在はすべての企業において割増賃金率50%が適用されています。

4.5 労働時間の客観的把握

労働安全衛生法の改正により、すべての労働者の勤務状況を客観的に把握することが義務づけられました。長時間労働の抑制と労働者の健康管理をねらいとしています。

以前は対象外とされていた裁量労働制の適用者や管理職も対象となります。勤怠管理システムの導入など、就業時間を正確に記録することが求められています。

4.6 フレックスタイム制の拡充

多様で柔軟な働き方を実現するため、以前は1ヵ月とされていたフレックスタイム制の清算期間が3ヵ月に延長されました。清算期間の延長により、繁忙期に集中して業務をこなし、閑散期に十分な休息を取るといった柔軟な働き方が可能になりました。

4.7 高度プロフェッショナル制度の導入

高度プロフェッショナル制度とは、高度な知識や専門スキルを有し、一定以上の収入がある労働者を対象に、労働時間や休日などの労働基準法の規定を適用しない制度のことです。高度プロフェッショナル制度を適用するためには、本人の同意と労使委員会の決議が必要です。

高度プロフェッショナル制度と混同されがちな制度として「裁量労働制」があります。裁量労働制とは、業務時間を労働者の裁量に委ねる制度ですが、高度プロフェッショナル制度とは異なり、休憩や休日、深夜の割増賃金などの労働基準法の規定が適用されます。

また、裁量労働制の対象業務は幅広く、年収要件がないことも高度プロフェッショナル制度と異なる点です。

4.8 産業医・産業保健機能の強化

労働安全衛生法が改正され、労働者の健康やメンタルヘルスケア対策を強化するために、産業医・産業保健機能の強化が求められています。

具体的におこなうべきことは、産業医の訪問回数の見直しや活動環境の整備、健康相談体制の確立などです。また、企業は産業医に対して労働者の勤務時間に関する情報など、産業医が労働者の健康管理をするうえで必要な情報を提供する必要があります。

また、裁量労働制の対象業務は幅広く、年収要件がないことも高度プロフェッショナル制度と異なる点です。

4.9 不合理な待遇差の禁止(同一労働同一賃金)

パートタイム・有期雇用労働法の改正により、同じ仕事をしている正規雇用労働者と非正規雇用労働者に待遇面で差を設けるなど、雇用形態による不合理な待遇差をなくすための禁止事項が設けられました。

非正規雇用労働者とは、パートタイムなどの短時間労働者や有期雇用労働者、派遣労働者などのことです。職場における公正さと透明性を確保することをねらいとしています。具体的にどのような待遇差が不合理に該当するかどうかは、厚生労働省のガイドラインで示されています。

また、裁量労働制の対象業務は幅広く、年収要件がないことも高度プロフェッショナル制度と異なる点です。

参照:厚生労働省 「同一労働同一賃金ガイドライン

4.10 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

パートタイム・有期雇用労働法の改正により、これまで派遣労働者やパートタイム労働者に対してのみ適用されていた待遇に関する説明義務が、有期雇用労働者にも拡大されました。

賃金や福利厚生面など、正規雇用労働者と非正規の労働者との間に差がある事項について非正規労働者から質問があった場合、企業は明確な理由を提示する必要があります。

4.11 行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争手続(行政ADR)の規定の整備

ADRとは、民事上のトラブルについて、裁判ではなく公正な判断ができる第三者が間に入り、話し合いを通じて解決を図る手続きのことです。行政ADRは、主に待遇面などをめぐって事業主と労働者間でトラブルが生じた際に、都道府県労働局が両者の間に入って調整します。

また、行政が事業主に対して報告徴収・助言・指導などをすることがあり、これを「行政による履行確保措置」と呼びます。行政ADRや行政による履行確保措置は、これまで派遣労働者やパートタイム労働者にしか適用されていませんでしたが、有期雇用労働者にも適用されるようになりました。

今後の働き方における課題と展望

労働基準法によって時間外労働の上限が決められているが、特別条項を労使協定(36協定)に加えることで、企業は従業員に時間外労働させることができる。以前は労使協定の内容に違反しても罰則がなかったが、働き方改革関連法による労働基準法の改正で罰則が設けられた

ここまで解説してきたとおり、働き方改革は日本の就労環境に大きな変化をもたらしています。さらに、働き方改革にコロナ禍が重なったことも影響し、リモートワークやペーパーレス化、オフィスの在り方に対する価値観の変化などが一気に加速しました。

しかし、今までの働き方を変えるのは簡単なことではありません。実際、コロナ禍が落ち着いたことで出社を再開する企業も増えつつあります。
労働者側から見れば、時間や場所にとらわれない働き方は負担軽減につながるとともに、ワークライフバランスの実現に大きく貢献するものでしょう。しかし、今までの働き方を変えるのは簡単なことではありません。実際に、コロナ禍をきっかけにリモートワークへ切り替えた企業のなかにも、出社を再開する企業が増えつつあります。

しかし、今までの働き方を変えるのは簡単なことではありません。実際、コロナ禍が落ち着いたことで出社を再開する企業も増えつつあります。
今後は、出社とリモートワークを組み合わせたハイブリッドワークなども視野に入れつつ、自社にとって最良の働き方を柔軟に取り入れることが重要となるでしょう。
ハイブリッドワークについては、以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。

「ハイブリッドワークとは?メリットとデメリット、導入時の課題を解説」を読む ▶︎

「オフィス」から考える働き方改革

さまざまな働き方を模索するなかで避けて通れないのは、オフィスの在り方を考えることです。

リモートワークの導入では、従来のスタイルであった賃貸オフィスの契約は必須ではありません。出社人数に対して大きすぎるオフィスでは賃料の負担も膨らみます。賃貸オフィスの契約をやめ、削減したコストを働き方改革のために費やせば、社員の満足度を高めながら効率化や生産性の向上を図れるでしょう。

そうしたオフィスの在り方を実現するのが、レンタルオフィスやシェアオフィスの存在です。ワークスタイリングは、都心の主要ビジネスエリアにレンタルオフィスを展開しています。大小さまざまな占有オフィスを備えており、ビジネスの成長に合わせた柔軟な活用が可能です。

また「人的資本経営」の観点から、企業の大切な資本である人材を長期的な視点で支えるさまざまな施策を展開してきた経験を活かし、利用される企業様に満足いただけるサービスを幅広くご提供しています。

時代のニーズに合ったオフィスのスタイルを取り入れ働き方改革を実現したいなら、ぜひワークスタイリングの活用をご検討ください。

まとめ

働き方改革の推進は、離職率の低下や優秀な人材の採用など、企業にさまざまなメリットをもたらします。労働者個々の事情に応じた多様な働き方を可能にするためには、レンタルオフィスやシェアオフィスの活用も視野に入れた柔軟なオフィス空間の確保がポイントとなります。

ワークスタイリングは、自社のニーズに合わせて柔軟に活用できるレンタルオフィスです。1ヵ月から利用でき、本社オフィスとして使うことも、プロジェクト単位で活用することも可能です。通信インフラやオフィス家具も備わっており、初期費用も最低限に抑えられます。
オフィスから働き方改革を進めたい際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。