神田さんの仕事について教えてください。
3次元のテクノロジーを使ったコンサルティングの会社の取締役をやっています。これまで、新しい3Dプリンターや新しい材料の開発などに携わるなど、ものづくりに関わってきました。3Dプリンターで使用できる素材って、プラスチックだけだと思われがちなんですが、紙・石膏・木質フィラメントなど、素材は無数にあります。これはもっと広く知られてほしいですね。製造業に限らず、3Dプリンターの新しい使い方を考える仕事も増えています。製品の機能面を拡張したり、効率を高めたりすることは他社でもやっていますが、私は今まで3Dプリンターが使われていなかった業界にこの技術を紹介することに可能性を感じています。事例としては、物流が困難な地域のスーパーマーケットの一角に、3Dプリンターやレーザーカッターが設置されたカフェをつくりました。そこでは例えば子どもの名前入りの箸をつくったりできるので、これまで都会に行かなくては買えなかったものを、自分たちで作れるようになりました。このようにこれまで関係ないと思われていた業界に、3Dプリンターの可能性を伝える橋渡しをするのが私の役割です。

「次世代ものづくり」とは、どういうものを指すのでしょうか?
「ものづくり」って従来だと、例えば製造や工芸など、物理的に物をつくることを指していました。でも近年では「ものづくり」という言葉の定義が広がってきていて、Webのサービスなどもプロダクトって呼ばれますよね。今では「ものづくり」の定義の境目がほとんどなくなってきているように感じます。ですので、3Dプリンターをはじめ、新しい技術をつかって何か新しい価値を生み出すことを「次世代ものづくり」と呼んでいます。人類の歴史を見てみると時代・文化が進む時って「ものづくり」が関わっているんですよね。1つひとつの技術が文明をつくってきたと言っても過言ではないでしょう。現代では自分たちが気づかないくらい身近なところにすごい技術がたくさんあります。こうした次世代の技術を世の中に広めていきたいですね。
3Dプリンターをどういうところで活かしてほしいですか?
以前だと、3Dプリンターって工場や施設と紐付いたものだったんです。機械自体の価格も大型機で数億円と高価でしたし、必要とする人・業界も限られていました。ですが今では、ご家庭でも手が届く価格帯の製品もありますし、もっと気軽に色々なところで使われると嬉しいですね。例えば、仕事で印刷を扱う人だったら、3Dプリンターが活躍する機会も多いのかなと思います。紙にできなくて3Dにできることは、モノのボリュームを表現できることなんです。だから紙に情報を印刷して伝えるのではなく、3Dでつくった物体そのものを、質量・体積を持った情報として渡すといった方法も考えられますね。

ワクスタの会員さんと、どんな形で協働できるでしょうか?
地域に根ざしたプロジェクトや現場で活動しているチームが、次世代テクノロジーを使えたら色々変わると思います。今では教育現場でも取り入れられていますが、それ以外の活用も可能性があるでしょうね。私個人としては草の根活動や地元に密着している人、3Dプリントを使うという選択肢がない人に、3Dプリントを使う選択肢があれば面白いと感じています。だから、これまで3Dプリンターを知らなかった方や業界ほど、協働したら面白いものを生み出せるのかなと思います。ワクスタの各拠点にも、ぜひ3Dプリンターを置いてみたいですね。いつでもレクチャーします。

プロフィール
Saori Kanda Hiramoto
次世代ものづくり
株式会社wip 取締役