甲斐さんの仕事について教えてください。
誰もが資産運用を楽しめる証券プラットフォームを展開する「株式会社FOLIO」の代表取締役CEOをやっています。会社の主軸は2つありまして、1つが例えば「京都」「コスプレ」など好きなテーマに投資できる証券事業やAI搭載のロボアドバイザーに資産運用をお任せできる運用事業です。これまでの投資サービスって、主に富裕層のみに提供しているものが多かったのですが、これらは「資産運用がもっと身近なものとして世の中に広まってほしい」という想いで立ち上げました。もう一つの軸は、銀行・証券・信託銀行など金融機関向けのシステム基盤のSaaS事業です。金融系のシステムを自社で作り込むと時間も予算も膨大にかかってしまいます。ですので我々が自由度の高い金融システム基盤を開発して、金融機関にSaaSとして提供するという事業をやっています。

世界と比べて、日本の金融リテラシーについて、どのようにお考えですか?
日本では、まだまだ投資・資産運用というと馴染みのない方が多く「ちょっと怖い」「一種のギャンブル」という印象を持たれがちです。事実、今でも日本の多くのお金が銀行に滞留し、預金額も増え続けているという状況になっています。一方、アメリカでは子どもの頃から投資や資産運用など金融リテラシーについて教えられる機会があります。一例として、アメリカの元銀行員の女性がつくったちょっと面白い貯金箱があります。「MONEY SAVVY PIG」と言いまして、これは一見よくある豚の貯金箱なんですが、穴が4つありお金が貯まる部分が別れているんです。そして、それぞれにSAVE(貯める・貯蓄)、SPEND(つかう・消費)、DONATE(ゆずる・寄付)、INVEST(ふやす・投資)と書かれていて、4つのお金の使い方を感覚的に学べるようになっているんです。DONATE(ゆずる・寄付)が入っているのがいかにもアメリカらしいですよね。日本はこれで言うと全部SAVE(貯める・貯蓄)しているというのが現状です。私は日本の金融リテラシーを高めるためには、例えば「大学のセンター試験」のような多くの人が経験する、かつ、その成績が評価されるといったものに「金融」という科目を組み込むのが良いと思っています。日本人はとても真面目ですので、義務教育に取り込んでいくというのは有効だと思いますね。金融というのは「お金の話・投資の話」のような大人になって知る知識ではなく、実は本質的にはすごく色んな教科の知識が必要なんです。例えば、今の金融は数学的素養がめちゃくちゃ重要ですし、マクロ経済なんて科目で言うと「社会」ですし、文系理系に渡る横断的な知識・知見が必要になってきます。金融はやり方を間違えれば大変なことになりますが、正しい知識があれば自分の資産を自己防衛できる手段になるんです。だから、義務教育に取り入れていくのも良いと思うんですよね。
金融業界に対して、どのような働きをしていきたいですか?
日本の金融業界の一つの大きな問題はシステム部分にあります。これは官公庁も頭を抱えている問題で、古くから使われてきたシステムやその提供会社が限定的であるため、保守運営費用も高く、また、柔軟な新たなサービス改善などの取り組みが難しいという問題を抱えています。具体的には、金融のシステムは制度対応や顧客の影響を考えると頻繁に変更できるものではありませんので、昔に作られた大きなシステムをベースに、新しいシステムを積み上げて、積み上げて、フランケンシュタインみたいな構成、つまり技術負債が積み上がっています。こうなってくるとなかなか新しいシステムが導入できず、先進的なサービスやシステムというものが構築されにくい構造になってきています。そこで我々のミッションの中心になるのが「金融システムを変え、金融サービスを進化させる」ことができるようにしていくことです。より安く、早く、しかも、より良いシステムを提供することによって、安価で先進的な金融サービスをお客様に提供できるようなシステムを金融機関に提供していきたいと考えています。私たちは基幹システムをつくる人たちと協業しながら、様々な金融システムをつくっている会社さんとコラボレーションして、日本の金融が抱えている問題点を改善していきたいと思っています。

ワクスタの会員さんと、どんな形で協働できるでしょうか?
私たちは基本的に金融機関に向けたサービスが専門ですので、金融システムをつくっている会社さんなどがあれば是非ご一緒に協業したいと思っています。また、金融に関することで何かができそうなことがあれば、ぜひぜひご相談いただければと思っています。

プロフィール
甲斐 真一郎
金融、フィンテック、資産運用
株式会社FOLIO
代表取締役CEO