成澤さんの仕事について教えてください。
移住×転職支援サービスの「株式会社YOUTURN」の取締役と、地方の会社を中心とした経営コンサルティングをやっています。「経営者は孤独」という言葉がありますが、やはり経営者は他の社員とは視点が違うので、お互いの想いや認識にズレが生まれることがあるんですね。だから私は経営者の考えに言葉をつけてあげるというようなことをやっています。私は目が見えないので、これまでに本も5〜6冊しか読んだことがないですし、パソコンもスマホも持っていない、人と共有できるものって言葉だけなんですよ。だから人と言葉を紡ぎたい、言葉を共有したいという欲が強いんだと思います。一方で経営者の方は言葉が足りないことが多いので、そこを私がお手伝いしています。特に私って普通の人と比べてハッキリ物事を言いやすいんですよ。顔色を窺うことが物理的にできないので、見えることによる囚われがないんです。だから偉い人達の会議などに呼ばれても全然平気です。もし目が見えていたらメチャクチャ緊張すると思いますけどね。あと意外に思われることが多いんですが、かなり移動が多いですね。地方のクライアントが多いため、一昨年などは年間で100回くらい出張に行きました。ブラインドの人って、移動が少ないイメージを持たれているので、CAさんなどには「私より飛行機に乗っていますね」と驚かれたことがあります。
仕事をする上で、大事にしていることなどありますか?
私は仕事をする上で、3つのルールを定めています。1つ目は「初体験の仕事しか受けない」です。例えば、飲食事業の仕事を既に請け負っていたら、同じような内容の仕事は受けません。しかし、同じ飲食事業だとしても内容が違うものであったり、私が初体験要素を見いだせるものであれば引き受けます。この理由は、自分が経験に囚われたくないから。初体験というバランスが自分にとってちょうどいいんです。2つ目は「結果にコミットしない」こと。結果にコミットをすると打率が良くならないんですよ。結果を出そうとすると、人間どうしても足がすくんじゃうんですよね。だから自由に発言ができなくなってしまう。私は50社以上のクライアントがいますけど「○年後に営業利益を00%上げる」みたいな約束は全くしていません。「結果にコミットしない」ことによって「とりあえずやってみよう」という選択肢が取れるというメリットもあります。3つ目が「継続性を担保しない」。例えば「1年間ダイエットやってみたいけど、半年で止めちゃうとみんなに笑われるし、私できなかったと自己嫌悪してしまうのが怖いからダイエットすること自体止めよう」ってなっちゃうんですよ。だから継続性という縛りがない方が「とりあえずやってみる」ができて良いんですよね。「初体験の仕事しかしない」「結果にコミットしない」「継続性を担保しない」こんな3つのルールを設けて「どうやったらこれで仕事が来るんですか」と聞かれることも多いんですが、実際にこれでも仕事が来るんですよね。あと社長が出てこない会社とは取引しないようにもしていますね。
勉強や情報収集などのインプットはどうしているのですか?
まず1つは「良いアウトプット」が私にはあるんですよ。アウトプットがあるからインプットができるんです。勉強しようといって勉強できる人ってなかなかいないじゃないですか。私には毎月50社以上のクライアントが追いかけてくるんですよ。先方は「今月はどんな話をしてくれるのかな」と楽しみにしているので、必死でインプットしなきゃいけないんです。だから良いアウトプットの機会を持っているというのが私の強みです。だから皆さんも良いインプットをしたかったら、先に良いアウトプットの場を創るほうがいいと思います。例えば月に一回会社の朝礼で喋るとか、友人と月に1回朝活するとかでも良いですし。次は「知ったことをすぐに喋る」です。ちょっと知っただけの情報でもアウトプットすると、フィードバックが来るので、そこで喋った知識をさらに深めるということをしています。最後は「人の力を借りてインプット」ですね。秘書が私に毎月100個のメディアの記事を送ってくるのですが、記事を選んでコピペしてくれているという人の手が入っていることによって読まなきゃなという気になるんです。これが自動的に出てくるニュース記事や配信記事だったら、なかなか読む気にならない。たまにダイエットの記事とかがセレクトされていたりするんですが「これは秘書からの痩せろというメッセージかな」などと思うことはありますね(笑)。
ワクスタの会員さんと、どんな形で協働できるでしょうか?
一言で言えば「僕の初体験を唆してほしい」ですね(笑)。私みたいな人材は特に大企業なんかにはうってつけだと思うんですよ。「忖度が目ではわからない」「大量の情報を持っている」「その情報が全て、経験した事実」そして、事業をつくったり組織をつくったりすることができる。実際に現在も日本の誰もが知る大企業の支援をいくつかしています。だからプロ野球の「助っ人外国人選手」のような枠で声をかけてもらえればと思います。
プロフィール
成澤 俊輔
障がい者雇用やダイバーシティを通じた経営コンサルティング
世界一明るい視覚障がい者