【2023年】フリーアドレスは失敗する?
原因と課題、本当に快適な働き方とは

働き方の多様化やIT技術の進歩により注目を浴びているフリーアドレス。しかし、導入したものの自社には合わなかったなどの理由から、コロナ禍が落ち着くと同時に従来の働き方に回帰する企業もあります。
この記事では、フリーアドレスの基本を解説するとともに、導入に失敗する原因や課題、有効に活用するための方法についてご紹介します。

フリーアドレスイメージ

フリーアドレスとは?

「フリーアドレス」とは、働く人それぞれが好きな席を選んで働くワークスタイルのことです。あらかじめ決められた固定席で働く従来のオフィスでは、社員のコミュニケーションが席の近い人に固定化される傾向にあります。また、社員の数だけ座席を用意する必要があるため、まとまったオフィススペースを確保しなければなりません。
フリーアドレスは、こうした固定席のデメリットを解消できる方法として、コミュニケーションの活発化やスペースの有効活用を目的に導入されてきました。

1.1 フリーアドレスが注目される背景

フリーアドレスは、1987年に日本で生まれたオフィスレイアウトの方法です。当時はOA機器をはじめとしたオフィス機器が増え、多くのオフィスでスペース不足が問題となっていました。
そこで、日中は外回りでほとんど使われない営業職のデスクをフリーアドレス化し、限られたスペースを有効活用しようと考案されました。その後、大企業を中心に広がりを見せましたが、当時の技術ではシステム上の課題も多く、一般的に定着するには至りませんでした。

フリーアドレスが再度注目されるきっかけには、IT技術の進展、政府による働き方改革の推進、そしてコロナ禍による出社率の低下などが挙げられます。普及の障害となっていたシステム上の課題も技術の進歩によって解消され、多様化する働き方に応えるオフィスの形として注目を浴びました。

しかしコロナ禍が落ち着いてきた近年では、後述する理由により、一度導入したフリーアドレスを廃止する企業も出てきています。導入検討の際は、目的とゴールを明確化し、デメリットも理解したうえで、運用方法を慎重に考える必要があります。

フリーアドレスのメリット・目的

フリーアドレスのメリット

では、フリーアドレスの導入には具体的にどのようなメリットや目的があるのでしょうか。

2.1 オフィス空間を有効活用できる

フリーアドレスでは、実際に出社して働いている人の分だけデスクがあれば問題ありません。所属社員の人数分だけデスクを用意しなければならない固定席スタイルに比べ、デスクの数を減らせるのがメリットです。デスク削減で生まれた空間は、会議スペースやコミュニケーションスペースなどのABWとしても有効活用できます。

2.2 チームやプロジェクトで臨機応変に集まれる

一人の社員が複数のチームやプロジェクトに関わっている場合、フリーアドレスなら座席を自由に選べるので、座席に縛られることなく「人」中心で臨機応変に集まれます。この柔軟さもフリーアドレスのメリットといえるでしょう。

2.3 社員間のコミュニケーション促進につながる

固定席の場合、どうしても近隣の席に座っている人とのコミュニケーションに終始しがちです。一方、フリーアドレスで毎回席が変われば、普段あまり話さない社員とも自然に交流が生まれるため、社員間のコミュニケーションの活性化が期待できます。
上司と部下、先輩と後輩など、上下関係による座席配置も取り払えば、風通しのよい職場環境の実現にもつながるでしょう。

2.4 ペーパーレスやオンライン対応が進む

フリーアドレスを効率的に運用するためには、ペーパーレス化が欠かせません。毎回紙の書類を持ったまま座席を移動するのは不便なうえ、書類を紛失するリスクも高まるためです。加えて、どの座席にいても業務に従事できるオンライン環境の整備も必須です。フリーアドレスを導入すれば、必然的にペーパーレス化やオンライン対応が進み、コスト削減や業務効率アップにつながります。

フリーアドレスのデメリット・失敗する原因

フリーアドレスのデメリット

さまざまなメリットがあるフリーアドレスですが、定着せず廃止する企業も増えています。ここからは、フリーアドレスが抱えるデメリットと、導入に失敗する原因について見ていきましょう。

3.1 業務がフリーアドレス向きではない

そもそも業務がフリーアドレスに向いていない企業や職種もあります。例えば、人事・経理・法務などは個人情報や機密情報を扱うため、座席が毎回変わるフリーアドレスには不向きといえるでしょう。フリーアドレスに向いている部署・企業とそうでない部署・企業については後ほど解説します。

3.2 環境構築にコストと時間がかかる

フリーアドレスは省スペース化、ペーパーレス化、オンライン対応によってコスト削減が見込めますが、環境を構築するためにはコストと時間がかかります。社員一人ひとりにパソコンやタブレットを持たせる、社内のオンライン環境を整える、フリーアドレスでも使いやすいデスクを新たに購入するなどの投資が必要です。
加えて、フリーアドレスに適したツールを導入した場合には、社員教育にかかる時間も考慮しなければなりません。

3.3 在籍管理や評価、教育が難しくなる

フリーアドレスでは、社員がどこで仕事をしているのかわかりづらくなります。部下の働きぶりが可視化されにくくなるため、管理者からすると評価や教育が難しくなるケースもあるでしょう。そのため、報連相に関するルールの作成と徹底、在籍管理ツールの活用などを検討する必要があります。

3.4 結局同じメンバーで集まってしまう

好きな席を選べるとなると、仲のよいメンバーで固まるケースも出てきます。特定の社員で毎回固まってしまうと、普段話さない社員とのコミュニケーション促進が図れず、フリーアドレスの目的が果たせません。メンバーが固定されないようフリーアドレス導入の目的を周知徹底するとともに、連続で同じ人の隣に座らないなどのルール整備が大切です。

3.5 持ち物管理でトラブルが生じる

固定席であればデスクに付属した収納スペースで持ち物を管理できますが、フリーアドレスではそうはいきません。そのため、重要書類や個人情報の流出には細心の注意を払う必要があります。トラブルを防ぐためには、鍵付きのパーソナルロッカーの設置が有効です。

3.6 席が足りなくなる

フリーアドレスの導入にあたっては、想定される出社率に合わせて座席数を減らすのが一般的です。このため、想定よりも多くの社員が出社した日には席が不足する事態も考えられます。
ニッセイ基礎研究所の分析によれば、2023年4月最終週の東京のオフィス出社率は76.2%。他の大都市でも8割前後となっていることから、一定の座席数は確保したほうが安心でしょう。

参照:ニッセイ基礎研究所 「コロナ禍におけるオフィス出社動向-携帯位置情報データによるオフィス出社率の分析

フリーアドレスが定着しない企業・部署の特徴

フリーアドレスが定着しない企業

フリーアドレスは、企業や部署によって向き不向きがあります。
フリーアドレスは出社率に合わせて座席数を減らせることがメリットであるため、そもそも社員の在席率が高い企業では定着しづらいのが実情です。また、前述のとおり、個人情報や機密情報を多く取り扱う部署はフリーアドレスに向いていません。人事・経理・法務などバックオフィス系の職種が該当します。

ワークスタイリングFLEXは、拠点スタッフによる入退室管理やセキュリティカメラによる警備など、セキュリティ体制が充実。個人情報や機密情報を多く取り扱う企業・部署でも、フリーアドレスの導入を検討できます。

「ワークスタイリングFLEX」の施設・設備について詳しく見る ▶︎

出社率の高い事務職、デスクトップパソコン・大型モニターでの作業を必要とするエンジニア、クリエイターや設計職なども注意が必要です。こうした職種の社員を多く抱える企業では、フリーアドレス導入前にどうすれば定着するか、そもそも導入すべきかをよく検討することが重要です。

フリーアドレスと相性のよい企業・部署の特徴

フリーアドレスと相性のよい企業

反対に、外回り営業やリモートワークの社員が多く、日頃から出社率が低い企業・部署は、フリーアドレスに向いています。座席数を減らしてオフィス空間を有効活用できるでしょう。
社員が部署横断的に関わるプロジェクトが多い企業も相性がよいといえます。社員同士のコミュニケーションが活発になり、新たなアイデアが生まれやすくなります。

外回りの多い業種であれば、タッチダウン利用が可能なサテライトオフィスもおすすめです。ワークスタイリングFLEXを利用すれば、全国約150拠点に展開するサテライトオフィスであるワークスタイリングSHAREや個室特化型サテライトオフィスのワークスタイリングSOLOも利用可能。外回りの多い社員の柔軟な働き方を実現できます。

「ワークスタイリングFLEX」について詳しく見る ▶︎

フリーアドレスを有効活用するためのポイント

せっかくフリーアドレスを導入するのであれば、長期にわたって有効活用したいところです。そこで、有効活用のためのポイントを3つご紹介します。

6.1 導入目的とメリットを社内に周知する

社内に周知する

何より大切なのは、実際にオフィスで働く社員にフリーアドレス導入の目的やメリットをしっかり理解してもらうことです。まずは導入の目的とゴールの周知を徹底し、社内意識の統一を重視しましょう。

6.2 フリーアドレス以外の環境も同時に整える

ただ座席を自由に選べるようにするだけではフリーアドレスは定着しません。社員が働きやすい環境を同時に整える必要があります。資料を持ち運ばずに済むようペーパーレス化を進めたり、どこからでも業務ができるようオンラインに対応したりするなどの取り組みが挙げられます。他にも共用の文房具やちょっとした菓子類などを用意しておくとよりよいでしょう。

6.3 導入後も反応や課題を整理して改善を続ける

フリーアドレスを導入しただけで安心してはいけません。むしろ、導入後にどうやって運用していくかが定着の鍵です。定期的にアンケートを実施するなど、実際に働く社員の意見を吸い上げるようにしましょう。寄せられた意見から課題を抽出し、どうすればよりよくなるのか、改善を続けることが大切です。

失敗しないフリーアドレス導入の流れ

長期にわたり、しっかり活用されるフリーアドレスにするためにはどのように準備を進めればよいのでしょうか。ここではフリーアドレスの導入方法について解説します。

7.1 導入目的とゴールを確認する

導入目的とゴールを確認する

まずはフリーアドレスの導入目的とゴールを設定します。目的や目標を定めないことには成果を判断することもできません。また、「なぜフリーアドレスを導入するのか」を社員に周知する際にも目的の具体化が必要です。

7.2 フリーアドレスを導入する部署を決める

次に、フリーアドレス導入の効果があると見込まれる部署を選定します。外回りの多い営業部門、リモートワークの多い企画・マーケティング部門などが導入候補となります。この記事の「フリーアドレスと相性のよい企業・部署の特徴」も併せてご参照ください。

7.3 用意する座席の数を決める

導入する部署が決まったら、用意する座席の数を決めていきます。部署ごとの在席率の実態を把握し、出社率が高い日でも席数が不足しないよう設定しましょう。

7.4 フリーアドレスが定着するよう働きかける

定着させるためには社員一人ひとりへの働きかけが欠かせません。最初に設定した導入目的とゴール、運用ルールを広く周知しましょう。社員向けの説明会を実施する、運用ルールを社内ツールで周知するなどの方法が考えられます。場合によってはルール作りの段階から導入部署の社員に参加してもらい、導入に向けた機運を高めるのもおすすめです。

フリーアドレス以外の選択肢を検討するのも有効

フリーアドレスの導入を検討するにあたり、「コロナ禍を経て出社する人数が減ったのでオフィスを効率化したい」「社員の勤務環境を改善したい」「多様な働き方を応援したい」など、さまざまなニーズがあるかと思います。しかしこうしたニーズや課題の解決には、フリーアドレス以外の選択肢もあります。

例えば、レンタルオフィスを利用すればビジネスに必要な什器や設備機器が備わっており、オフィスにかかる初期費用を抑えられます。他の入居企業とのコミュニケーションも生まれるため、新たなビジネスチャンスも期待できるでしょう。また、共有スペースをフリーアドレス形式で使えるシェアオフィスも、オフィスの効率化や多様な働き方への対応に効果的です。

ワークスタイリングFLEXは、利便性の高い主要ビジネスエリアに展開するレンタルオフィスです。シェアオフィスのワークスタイリングSHAREと併せて活用すれば、専有スペースを減らしつつ、多様な働き方に対応できます。
時代の変化に応えるオフィスをお求めの場合は、ぜひワークスタイリングFLEXの活用をご検討ください。

まとめ

働き方の多様化や出社率の低下、IT技術の目覚ましい進歩を背景に、導入する企業が増えてきたフリーアドレス。しかし、闇雲にフリーアドレスを採用しても有効活用はできません。自社の業務内容や社員の出社状況を見極めたうえで、フリーアドレスの採否や導入範囲を決める必要があります。状況に応じ、レンタルオフィスやシェアオフィスの活用も視野に入れた検討をおすすめします。

ワークスタイリングFLEXは、社員にとっても利便性の高い都心の主要オフィスエリアにレンタルオフィスを展開しています。最新のオフィス設備を備えており、コストを抑えながら効率的なオフィス空間を実現できます。

フリーアドレスと並行してレンタルオフィスやシェアオフィスのご利用をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

その他の
コンテンツを見る

  • 変化するオフィス出社率、今後オフィスはどうあるべき?

    変化するオフィス出社率、今後オフィスはどうあるべき?

    働き方改革や新型コロナウイルスの影響などを受け、近年オフィス出社率は大きく変化しています。一方、コロナ禍では出社を大きく制限する企業が多かったものの、アフターコロナで出社率を再度高める動きも見られます。
    この記事では、働き方改革からアフターコロナにかけての情勢や働き方・出社率の変化を解説し、アフターコロナ時代においてオフィスに求められる役割とポイントを考えていきます。

  • オフィス改革とは?

    オフィス改革とは?

    働き方改革の取り組みが重視されるようになって久しい昨今、「働く環境」の見直しとしてオフィス改革を検討する企業が増えています。
    この記事では、オフィス改革の概要や取り組むべき企業の課題、課題解決のための具体策などを解説します。

  • プロジェクトオフィスとは?

    プロジェクトオフィスとは?

    大規模なプロジェクトを進める際や社内で複数のプロジェクトを並行して進める際は、プロジェクトメンバーを集めるための執務空間や会議室が不足する場合があります。こうした際に有効なのが「プロジェクトオフィス」の導入です。
    この記事では、プロジェクトオフィスとはどのようなものか、導入するメリットやオフィス選びのポイントなどを解説します。